2022 Fiscal Year Research-status Report
近世ヨーロッパにおける女性の宗教運動-宗教上の平等の可能性と限界をめぐってー
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22K12647
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Research Institution | Miyagi Gakuin Women's University |
Principal Investigator |
櫻井 美幸 宮城学院女子大学, 学芸学部, 准教授 (60710902)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ジェンダー史 / 女子教育史 / 女性の宗教運動 / 宗教改革史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、女子教育の名のもとに自ら積極的な使徒的活動に身を投じた女性たちの活動に焦点を当て、女性の地位が低下したといわれる近世における女性の宗教運動の可能性と限界を明らかにすることである。対抗改革期に設立された教育女子修道会が運動の主体であった。その中で英国女子修道会を中心としたイエズス会女団体を研究対象に据えた。英国女子修道会を筆頭とするイエズス会女団体を能動的かつ宗教的情熱を持った女性運動として捉えることを研究の主眼に置く。 まずは、教皇庁の宣教省によるイエズス会女団体への弾圧と、反対に英国女子修道会を支援し、教皇庁から会の廃止命令が出た後も自領での存続を模索し実現させたバイエルン公・マクシミリアン1世の姿勢を軸に、宣教省側の史料とメアリーとマクシミリアンの書簡を手掛かりとして考察を行った。メアリーが残した聖俗両方の支持者たちとの数多くの書簡や、イエズス会女に関する教皇庁や各地のイエズス会についての史料はDirmeierが網羅的に編纂したものが刊行されているので、これをおもに使用し、バイエルン側の補助文献も使用した。当時バイエルンにおいてカトリック教育の危機が進行していたこと、とくに女子教育については担い手が絶対的に不足しており、英国女子修道会学校の成功を聞いていたマクシミリアンにとって、英国女子修道会は必要な団体であったことを明らかにした。教皇庁への配慮もあって、女子教育を行う世俗団体として英国女子修道会学校を存続させたが、他地域で弾圧を受けた中で、この措置は団体の存続、そして後の時代の宗教団体としての認可に繋がっていく。この成果は、『人文社会科学論集』32号において「バイエルンにおける英国女子修道会の存続 マクシミリアン1世とメアリー=ウォードの関係を中心に」として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で述べた通り、2023年3月発表の論文において1年目の課題については概ね当初の目論見通りに進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目の課題は、ミュンヘンでの存続決定後にバイエルンで勢力を拡大した英国女子修道会学校についての動向について考察することである。最初にバイエルンで新たに設立されたアウクスブルクの学校を取り上げる予定で、史料や論文等を現在収集中である。また、当時(17世紀半ば)のアウクスブルクの女子教育の現状や、宗教対立などの背景も含めて研究を進めるため、アウクスブルクの政治状況についての研究書も収集中である。今のところ順調に収集しているが、アウクスブルクで出版している英国女子修道会の雑誌(18世紀以降)は日本では手に入れられないので、夏にアウクスブルクの司教文書館に行って、収集を行う予定である。それらを使用して、秋以降論文を執筆する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナの影響で、出席予定の学会等がオンラインになったこと、著書や雑誌の購入予定が雑誌論文の電子化や図書館で借りることが出来たことなので使用予定の費用が少ない額で済んだ。今年度は海外渡航が可能になったので、史料収集のためドイツへの渡航費用として消化できなかった分も使用予定である。
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