2022 Fiscal Year Research-status Report
細胞内微細構造のSEM反射電子像の高解像化のための画像処理法の開発
Project/Area Number |
22K12808
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
田中 成泰 中部大学, 生命健康科学部, 教授 (70217032)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 最大エントロピー法 / 走査型電子顕微鏡 / 反射電子像 |
Outline of Annual Research Achievements |
走査電子顕微鏡(SEM)の反射電子像は、組成を反映した像コントラストが得られ、また試料作製が比較的容易なため、細胞の断面観察など医学・生物学分野で盛んに利用されている。しかし、反射電子像は、試料内で散乱され表面から飛び出してきた電子を使って像を描くため、散乱による広がりの分だけ像がボケる。特に生物試料は原子番号が小さいので、ボケの程度が大きい。また、実際の反射電子像にはノイズも加わり、解像度はさらに低下する。本研究では、反射電子像の解像度を向上させるための最大エントロピー法(MEM)に基づく新たな手法の開発を目指している。本手法は、医学・生物学試料のSEM反射電子像を対象とするが、本研究での具体的な適用対象としては、ヒト胎児腎細胞(HEK293T)のSEM反射電子像とする。今年度は、ボケの原因である試料中の電子散乱の広がりをGeant4を用いたモンテカルロシミュレーションを使って計算する予定であった。しかし、本研究に関連した分野でノイズ除去の新しい手法(Total Variation Regularization(TVR法))が発表され、この可能性について検討する必要が出てきたため先にノイズ除去について検討した。Matlabを用いてTVR法のスクリプトを作成、モデル像を用いてノイズ除去の効果を確認している。次に、Matlabを用いてMEMのスクリプトを作成した。ノイズやボケの程度の異なる様々なモデル像についてMEMを適用し、画像修復の程度を検証した。この結果、良い修復画像を得るには、点広がり関数を正確に見積もることが必要であること、実際のノイズの性質がMEMで扱うノイズの統計的性質に一致することが必要であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究に関連した分野でノイズ除去の新しい手法(Total Variation Regularization(TVR法))が発表され、この可能性について検討する必要が出てきたため先にノイズ除去について検討した。このため、当初実施する予定であった反射電子発生領域の分布の見積りは行わなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
入射電子の広がりをモンテカルロシミュレーションによって見積り、点広がり関数をMEMで利用できる形で求め、実際にMEMに適用してこの方法の有効性を検証する。一方、これとは別の手法として、最も良い解像度を与えるような点広がり関数をMEM処理によって同時に求めるように新たなアルゴリズムを作成し実際のSEM像に適用して、その効果を検証する。また、TVR法はノイズ除去手法として有用であると考えられるので、MEMと組み合わせたノイズ除去法についても検討する。
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Causes of Carryover |
当初、モンテカルロシミュレーションを行うために高速で計算できるコンピュータを新たに購入する予定でいたが、本研究に関連した分野でノイズ除去の新しい手法(Total Variation Regularization(TVR法))が発表され、この可能性について検討する必要が出てきたため先にノイズ除去について検討した。このため今年度は新たなコンピュータを購入せず、次年度に購入することにした。
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