2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K13040
|
Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
梅田 径 青山学院大学, 文学部, 研究員 (10934193)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
|
Keywords | 小山田与清 / 近世文学 / 和学 / 松宇日記 / 西野宣明 / 書誌学 / 蔵書家 / 松屋外集 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の推進によって、国文学研究資料館のマイクロフィルムの調査が進展し、江戸時代後期の代表的和学者である小山田与清旧蔵書および小山田与清門弟による書写本の実相を一部明らかにすることができた。とくに西野宣明書写本の購入の意義は大きく、来年度以降に成果を発表できるだろう。また、江戸前期の研究も進展があった。『類礎』『萬葉類句』を著した西野宣明の研究が進み、その事蹟を知る事ができる『野田の足穂』を発見することができた。また、『万葉類句』及び『類礎』についての研究も進展しており、『類礎』の伝本の書誌学的調査を行うことができた。 本研究の主たる研究対象である与清の『松屋外集』について、もりおか歴史文化館本の調査を行い、従来知られていた版本とも国立国会図書館本とも異なる異本であることが判明した。これについては、国会図書館本に簡単な校合を施した上で『翻刻 松屋外集 巻一』として第一巻を刊行することができた。未刊であった江戸時代の考証随筆の資料紹介として重要な一歩であったと考える。同時に、小山田与清の考証随筆群、歌集群においては門弟の整理や手入れがなされており、その実相解明が今後の課題となる。その最初の一歩として西野宣明日記(松宇日記)の影印復刻を手がけることになった。すでに第一回配本が行われ、解題を付して第二回配本が2023年度に行われる。 また、小山田与清自身の書入本も各地の図書館に多数存することが確認された。その中では、『万葉集』書入本の研究が進んだ。寛永版本を底本とした書入本で、大久保正の論文で指摘されたものと同じものだろうと思われる。この『万葉集』についての成果も2023年度に公表される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍においてほぼ全ての研究機関・図書館が閉鎖状態にあったが、令和4年度においては順次条件付き開館が相次いだため、今年度では一定の書誌的調査が可能になった。翻刻の刊行も行い、当初の予想以上の進展があったと評価できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究としては『翻刻 松屋外集』の刊行を軸に、国際学会への参加と研究ネットワークの構築を行う。 ただし、研究手法としては、小山田与清旧蔵書の書誌文献学的探索と、和学者の学知研究の二面から行い、従来から変わるところはない。与清の学知がいかにして近代へと引き継がれていったのか/いかなかったのかを門弟の動向調査から知りたいと考えている。これは明治期の学術制度や図書館形成とも関わる問題である。 手始めに西野宣明という与清門弟の研究を進めていく。西野の日記『松宇日記』には江戸末期における彰考館の様相だけではなく、小山田与清の門弟たちの活動が記されている。この資料についての研究を進めることで、与清の学知がいかにして引き継がれたのかが明らかになるだろう。
|
Causes of Carryover |
コロナの影響で印刷費用及び郵送費が増大したが、旅費の支出はコロナの影響で抑えられ、多少の次年度使用額が生じた。2023年度に旅費や印刷費用として、使用する予定である。
|
Research Products
(6 results)