2022 Fiscal Year Research-status Report
英語名詞由来er名詞の実証的・理論的研究:構文とフレームの統合的アプローチ
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22K13137
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中嶌 浩貴 大阪大学, 大学院人文学研究科(言語文化学専攻), 講師 (00823460)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 英語 / er名詞 / 認知言語学 / フレーム意味論 / コンストラクション形態論 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度(R4年度)は先行研究の収集および名詞派生er名詞のデータ収集と整理を行うとともに、今後の研究の方向性を示すべく、予備的考察を通して検討すべき課題の整理と作業仮説の設定を行った。まず、現代英語コーパスThe Corpus of Contemporary American English (Davies 2008-)を用い、新規の名詞由来er名詞を網羅的に収集したデータベースを作成に取り組み、現象の整理・記述を進めた。 また、文献の収集と整理を通して、本研究につながる知見が得られた。まず、近年の意味論的アプローチでは、基体となる名詞およびer接辞について検討がなされており、特にそれらの表現が表す意味と背景的知識との関連性が焦点になっていることが判明した。このことは、本研究でフレーム意味論を用いて当該現象を分析するという観点と合致しており、本研究のアプローチの妥当性の傍証となるものと考えられる。ただし、名詞由来er名詞の全体像については依然不明瞭であることもわかり、本研究が取り組むべき課題であることが判明した。 また、先行研究でコンストラクション形態論での分析につながる萌芽的アイデアを提示している研究が存在することが判明し、本研究の基礎となる分析が得られた。ただし、必ずしも構文の概念を明示的に扱っているわけではなく、また、近年構文理論で提案されている下位の構文や構文ネットワーク等の考え方は必ずしも反映されておらず、今後発展させていくべき方向性を定めることにつながった。 上記の知見や成果を踏まえ、予備的考察を通して検討すべき課題の整理や作業仮説の設定を行った。これについては、現在までの研究の進捗の中間報告としてまとめた論文を準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は先行研究の収集および整理と、データの収集・分類を中心として研究を遂行した。現段階で、研究対象についての基礎的文献、および援用する理論のうち片方について重要な文献の収集と整理を行うに至っている。また、データについても、先行研究で指摘されているデータを整理しつつ、本研究の作業仮説の設定を行っている。これらについて、報告論文を準備中である。 ただし、年度途中で所属機関の異動およびコロナウイルスの再拡大の影響により、十分に予定されていた内容を遂行できなかった。まず異動のための諸作業が生じたこと、また予算の移管等の手続きにともなう執行の遅れが生じたため、関連する文献およびコーパスデータの収集に影響が出た。 また、参加を予定していた学会が急遽オンライン開催に変更になったことにより、関連する研究者との意見交換を行う機会を十分に確保できず、データの分析や文献調査に支障が生じた。 以上のため昨年度は予定通り研究を進めることが叶わず、上記で報告の進捗状況とした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(R5年度)は初年度(R4年度)の研究課題について、引き続き取り組む。具体的には、まず、言語事実の観察と先行研究の整理に努める。名詞由来er名詞は近年でも生産的な接辞であるため、英語コーパスを用いて名詞由来er名詞の、特に使用実態も十分に記述が可能な形で調査・観察を行う。調査には現代英語の観察に適した、現代英語コーパスThe Corpus of Contemporary American English (Davies 2008-)を用い、新規の名詞由来er名詞を網羅的に収集したデータベースを作成し、現象の整理・記述を行う。 また、文献調査も引き続き実施し、本研究で援用する理論の現在までの研究の展開を整理する。初年度でフレーム意味論にかかわる文献調査がある程度進んでいるので、これのさらなる充実を図りつつ、次年度は構文文法やコンストラクション形態論の文献を詳細に調査する。またこれら2つの関係性についての近年の議論を追跡し、当該現象の分析の基礎作りを行う。またフレーム意味論や構文理論に基づく当該現象にかかわる分析を提示している文献をさらに収集し、他の理論的枠組みからの分析も踏まえたうえで、当該現象をフレームと構文から説明する分析の妥当性を補強する。 上記について一通りの知見が整理でき次第、次年度の課題に取り組む。具体的には、収集・整理したer名詞のデータに基づき、本研究の中核をなす仮説の提案および分析を行う。昨年度の段階で文献調査および作業仮説についての中間報告をまとめているので、これを発展させる。これにより、コンストラクション形態論とフレーム意味論を組み合わせた分析を提案する。 また、提案する分析やコーパス調査により得られた事実観察を学会等で積極的に報告していくとともに、関連する研究を行っている研究者と議論を交えることに事によって、自身の研究のブラッシュアップを目指す。
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Causes of Carryover |
初年度(R4年度)に計画していた文献収集と学会出張のための予算について、コロナウイルスや所属機関異動のために計画通りに執行することができなかった。 次年度使用となった予算は、初年度で収集を計画していた文献の収集および学会参加のための費用として、次年度計画分とあわせて次年度に執行する。ただし、所属機関の異動にともない、パソコン等の購入の必要性が初年度に生じた。次年度もすでにオンライン開催が予定されている学会もあるため、次年度使用分を特に初年度で予定していた文献収集に回すこととし、資料の拡充を図る。
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