2022 Fiscal Year Research-status Report
戦後議員外交の発展に関する総合的研究:戦前との連続・非連続性に着目して
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22K13200
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
伊東 かおり 広島大学, 文書館, 助教 (90849902)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 議員外交 / 万国議院商事会議 / 列国議会同盟 / 貴族院事務局 / 経済外交 / 第一次世界大戦 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、参議院事務局で近年整備が進められている貴族院事務局関係資料(以下「憲政資料」と呼称)の調査を重点的に行った。その結果「憲政資料」の中に、列国議会同盟(Inter-parliamentary Union)と並んで帝国議会の多国間議員外交の場であった万国議院商事会議(Commercial Conference of the Inter-Paliamentary Committee、以下「商事会議」と呼称)に関する簿冊が充実したかたちで保管されていることを確認した。「商事会議」は現存していない国際組織であることもあって、これまで外務省が所蔵する「外務省記録」のほかは国内外でまとまった資料を発見できていなかった。このため、今回「商事会議」の事務局と日本の議会事務局の事務レベルでのやり取りを示す基礎的な資料を確認できたことは、貴族院の多国間議員外交の様相のみならず、実態があまりよくわかっていない「商事会議」についても基本的な活動内容の解明が期待できる。これは戦後に続く議員外交と経済外交との関係性を検討するうえでも画期的なことである。 本年度の研究調査により、貴族院の多国間議員外交に関する貴族院側の基礎的な資料の収集にはおおむね成功しつつあると言える。また「商事会議」に参加した議員の個人資料ついても、国立国会図書館や千代田区日比谷図書館で調査を行うことができた。 これら収集した資料をもとに、本年度は貴族院の商事会議への加盟経緯や貴族院の対外認識の変容、他の商業や経済に関する国際会議と万国議院商事会議との関係等について検討を行い研究報告を行った。また明治憲法成立前後における外交の議会容喙に関する思想的変遷について論文を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、(ア)戦前・戦後における政治家の議員外交に対する認識とその変容、(イ)経済外交と議員外交の連関性、(ウ)多国間議員外交から二国間議員外交への派生事例、の3つを主な課題に掲げているが、本年度は(イ)について進展が見られた。 本研究の申請段階では、参議院事務局に「商事会議」の資料があることはわかっておらず、英米など他の加盟国議会の資料調査を通して貴族院の議員外交の実態を間接的に明らかにすることを想定していた。しかし参議院事務局にまとまった資料が存在していたことで、貴族院と「商事会議」の関係を直接知ることのできる資料の分析が可能となった。 本年度は(ア)を中心に研究を進める予定であったが、「憲政資料」を調査する機会を得たため(イ)を実施した。コロナ禍やロシアによるウクライナへの侵攻等の影響により、今後も渡航が容易ではないことが想定されるなかにおいて、海外調査を想定していた(イ)の研究が進展したことは、予期しないことであった。
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Strategy for Future Research Activity |
おおむね当初の計画に従って引き続き研究を行う予定である。当面の間は(イ)について「憲政資料」の調査研究を進めていき、成果の論文にする。また早い時期に英・米にて議会資料の調査を実施し、他の加盟国の「商事会議」関係資料も収集する。同時に「商事会議」が所在したベルギーにて「商事会議」事務局の資料の存否を引き続き調査する。 併せて(ウ)の研究に着手し、スイスの列国議会同盟事務局にて戦後資料、特に日韓・日朝議員外交に関係する資料を調査するとともに、韓国でも日韓の議員外交や日韓議員連盟等に関する資料の状況について調査を行う予定である。
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Research Products
(6 results)