2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K13208
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
松本 智也 立命館大学, 産業社会学部, 授業担当講師 (20897110)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 日朝関係 / 寛政異学の禁 / 通信使 / 対馬藩 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は近世後期の日本でなされた朝鮮通信使の迎接に際しての儀礼空間(国書の様式、諱、拝礼、衣冠、筆談唱和等)をめぐる議論を検討し、それを通して日朝関係の近世から近代への転換について見直す視座を提示することを目標としている。本年度は、1811年度通信使迎接をめぐる議論の検討、今後の研究の中核をなす基本資料の収集・調査など基礎的な作業に重点を置いて研究に取り組んできた。また2023年6月に春風社より刊行予定の単著の執筆に取り組んだ。 史料の収集・調査:①岩国徴古館において吉川家寄贈藩政史料の調査を行った(2022年9月13日~16日)。『朝鮮人来朝上関日記』『朝鮮信使帰帆記』など岩国領における明暦~宝暦にかけての通信使関係史料50冊あまりを撮影した。岩国徴古館学芸員によると、岩国の通信使史料はあまり活用されていないとのことであり、当該史料それ自体を活用する意義が大きいことを知った。②対馬藩政史料の入手(2022年12月~23年1月)。国史編纂委員会、慶應義塾大学所蔵の対馬宗家文書マイクロフィルムを取り寄せ、朝鮮通信使に関わる『延享信使記録』『宝暦信使記録』など60冊あまりを撮影した。 研究発表:コリア研究センター月例会にて「18世紀の日朝知識人における通信使改革論」と題して報告を行った(6月3日)。1811年度通信使迎接(対馬易地聘礼)をめぐり、対馬藩、幕府、朝鮮王朝において行われた議論を検討した。易地聘礼に帰結する通信使改革論は日朝間での使節往来の不均衡の構造が『礼記』の理想に適っていない現状に対する論理的整合性をめぐる対応として把握できる点を指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、1811年度通信使迎接をめぐる幕府・対馬藩・朝鮮の議論を検討した。また岩国徴古館にて史料調査を行うことができた。なお当初意図していた以上に岩国徴古館所蔵史料の重要性を認識しえたことは、本年度の大きな成果だったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は計画どおり、宝暦度通信使と「寛政異学の禁」の関連についての検討に重点を置いて研究を進めていきたい。とりわけ柴野栗山と朝鮮通信使との関係について検討する見通しが立っている。また史料調査については当初の予定にしたがい東京、韓国での史料調査を行い、本年度やり残した九州・中国地方での調査も可能な限り行う。
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Causes of Carryover |
当初計画していた北九州市での調査を行うことができなかったため、次年度使用額が生じた。そこで、次年度は北九州市における調査を増やすことで次年度使用分に充てることを検討している。また次年度は単著を刊行することが決まっており、その購入・送付に要する費用に充てることも検討している。
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Research Products
(1 results)