2022 Fiscal Year Research-status Report
戦時・戦後における大都市近郊地域の歴史的変容と「生活課題」―兵庫県明石市の分析
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22K13216
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Research Institution | The Institute of Buraku Problem |
Principal Investigator |
本井 優太郎 公益社団法人部落問題研究所, その他部局等, 研究員 (60898013)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 軍需産業都市化 / 産業構造 / 戦時体制 / 農漁村経済 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、(1)明石市および国立国会図書館に所蔵されている戦時期明石に関する資料の収集・整理、(2)(1)の分析を通じた戦時期明石地域(旧明石市・大久保町・魚住村・二見町、以下明石地域と記す)の産業構造および住民の生活状況の分析を進めた。 (1)については、①旧明石市の事務報告書・市政要覧・会議録等の閲覧、②旧三町村公文書の写真撮影および中性紙保存箱への移し替え、③遠隔地(東京・横浜)所蔵の明石・神戸に関する資料調査を実施した。このうち②は明石市の歴史文化事業にも貢献するものである。また③では国立国会図書館所蔵の明石資料の悉皆調査の成果が大きく『漁家経済基本調査』(明石市水産会、1936年)、『物価高の農山漁村に及ぼせる影響』(中央農林協議会、1937年)、『兵庫県工場通覧』(兵庫県、1940年)はじめ、明石市立図書館・明石市立文化博物館・兵庫県立図書館等には未所蔵の資料・文献を多数収集することができた。 (2)については、①明石地域の事務報告書・市勢要覧・統計書等の精読に基づく産業別生産額、農地・工場・事業所数、職業従事者数等の内訳の推移の分析、②明石地域の土木関係書類・会議録・事務報告書等の精読に基づく、旧明石市における産業の軍需転換および旧三町村への軍需産業の進出の経過の分析、③『漁家経済調査』・『物価高の農山漁村に及ぼせる影響』等の精読に基づく、1930年代の旧三町村住民の生活様式および家庭経済の状況の分析をおこなった。以上を通じて、明石地域では日中戦争前後から軍需工場の立地が進展し、それにともない農地・溜池の減少や工場労働力の増加といった現象が起こっていたこと、いわば地域の軍需産業都市化が進んだという見通しを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近接地・遠隔地とも、おおむね計画通り調査を進めることができた。上記実績のうち旧三町村公文書の中性紙箱への移し替えについては、資料の点数が多いこともあり年度内に完了することができなかった。ただし、作業の過程で研究課題に適する文書を発見するなど、計画の遂行に資するものとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)引き続き戦前・戦時期の関係資料の収集・分析を進め、明石地域の軍需産業都市化の具体相を解明する。とくに①軍需工場および関係施設(寮・周辺街路・水路等)の立地のプロセスを、具体的なケースに即して明らかにする。そのさい、工場側の動きに加えて買収予定地の所有者(地主・自作農)の動向や主張にも注目する。また②主に旧明石市における動員・統制政策を分析し、戦時体制下の市民の生活状況を解明する。 (2)戦前・戦時の明石の都市計画について検討し、軍需産業都市化との関連性を分析する。 (3)占領・復興期の明石地域に関する資料の収集・分析に着手する。
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