2022 Fiscal Year Research-status Report
A Study of the Nature of Violence in Early Modern Germany from the Perspective of the History of Crime and Emotions
Project/Area Number |
22K13232
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
齋藤 敬之 南山大学, 外国語学部, 講師 (20822977)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 近世ドイツ / 犯罪史 / 感情史 / 暴力 / 決闘 / 学生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、17世紀後半から18世紀後半のドイツ・ザクセン選帝侯領を例に、中傷や挑発といった名誉にかかわる「言葉の暴力」、および傷害などの身体的暴力、とりわけ名誉と結びついた暴力の特殊形態としての決闘に対する規制や処罰の特質を明らかにすることを目標としている。加えて、暴力事件に関する言説や認識を裁判記録や知識人の著作などから読み取り、暴力に関わる怒りや恥、恐怖といった感情的次元をも検討することを試みたものである。 初年度は先行研究の整理と史料収集を課題とした。ただし、コロナウィルス感染の状況が好転しないことにより、ドイツの文書館(ザクセン州立中央文書館ドレスデン館やマルティン・ルター大学ハレ・ヴィッテンベルク文書館)を訪問する形での史料調査や収集を行うことはできなかった。それでも、ザクセン州立中央文書館ドレスデン館とは直接コンタクトを取り、整理番号などを予め把握できていた所蔵史料数点をデジタル化された形で入手することができ、その際の手数料や複写費は本研究費より支出した。 本研究における重要な課題である決闘の性質の検討に関しては、史料の入手状況にも鑑み、法規範や裁判記録以外に、(すでにデジタル化されておりオンラインで入手できる)当時の知識人の著作の分析にも着手した。その第一歩として、法学者アハスヴェールス・フリッチュによる学生の決闘に対する提言を分析し、決闘に対する描写や批判の特徴を検討した。その成果となる論考は2022年度末までに学内紀要に投稿を終えており、2023年6月に発行予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、所属先の業務に伴う研究環境の変化により、当初の予定通りには研究は進捗しなかった。本研究課題の方向性を提示することを目的とした、近世ドイツの決闘に関する研究動向を整理した論考については本年度中に投稿する予定であったものの、年度内には実現しなかった。 本研究課題はドイツの文書館に所蔵されている未刊行史料を主たる研究資料としているが、ザクセン州立中央文書館ドレスデン館やマルティン・ルター大学ハレ・ヴィッテンベルク文書館といった文書館を訪問する形での史料調査や収集が実現しなかった。それゆえ、新史料の発見までには至っておらず、現時点でまとまった成果を提示できる状況ではないと言わざるを得ない。本年度後半にザクセン州立中央文書館ドレスデン館に所蔵されているいくつかの史料をデジタル化された形で入手することができたものの、その分析にはなお時間を要する状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
近世ドイツの決闘に関する研究動向の整理についてはできるだけ早急に論考としてまとめ、2023年半ばをめどに投稿する。すでに多くの研究文献を入手できているが、その中でもそれぞれ2012年と2016年に発表された中近世ドイツの決闘に関する包括的な研究プロジェクトの成果に注目し、決闘研究や暴力研究に関する新たな論点を提示したい。 状況が悪化しない限りにおいて、2023年夏にドイツへ渡航し、ドレスデン、ライプツィヒ、ハレ(のいずれか)の文書館を訪問することを計画している。とくに、これまで一度も利用した経験のないマルティン・ルター大学ハレ・ヴィッテンベルク文書館を訪問し、利用可能性や史料状況などを把握することで今後の継続的な利用の準備を図りたい。
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Causes of Carryover |
史料調査と収集のためにドイツに渡航することを計画していたが、実現しなかった。そのため、この渡航に関わる費用が未使用となった。2023年夏に10日間ほどのドイツ滞在を計画しており、昨今の状況に鑑み、まとまった額の渡航費(航空券代や宿泊費)を支出する可能性がある。 また、次年度中に予定している論考の発表に必要な複写代や校正料の支出が見込まれる。
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