2022 Fiscal Year Research-status Report
Prozeduralisierung im Medizinstrafrecht
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22K13299
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
天田 悠 香川大学, 法学部, 准教授 (90779670)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 刑法 / 医事法 / ドイツ / 手続化 / 正当化 / 終末期医療 / 臨床研究 / 臨床試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
〔本研究の全体像〕 治療中止の適法性が問題とされた最決平成21年12月7日刑集63巻11号1899頁(川崎協同病院事件)や、厚生労働省のいわゆる「プロセスガイドライン」の策定等を契機として、医療措置の実施に際し、医療従事者が所定の「手続」を踏むことの重要性が指摘され始めている。このような状況の下、本研究は、関係当時者が予め定められた「手続」を履践しまたはこれに違背することが、犯罪の成否という実体に対し、なぜ/どのような影響を及ぼすかを明らかにすることを目的とする。 本研究の計画は、次の通りである。①まず、終末期医療と臨床試験の分野で近時注目を集めている「手続」の実態を正確に把握する。②次に、この2つの分野にいう「手続」の機能と限界を明らかにすべく、日本法と体系の近いドイツ法との比較検討を通じ、わが国にとり有意な解釈論的示唆を獲得する。③以上を踏まえて、医事刑法学における、あるべき「手続的正当化」理論の基本的枠組みを構築する。 〔令和4年度の研究内容〕 令和4年度は、上記〔本研究の全体像〕で示した計画のうち、研究①②を並行して進めた。特にリソースを割いたのが、臨床試験における倫理委員会の法的位置づけである。臨床試験を実施する際、研究者は、倫理委員会の審査手続を経る必要がある。こういった、倫理委員会の「お墨付き」は、臨床試験行為を正当化する際の重要な指標となる。しかし、倫理委員会の審査が、臨床試験行為をなぜ/どこまで正当化するのかは、必ずしも明らかにされていない。加えて、臨床試験の場面では、「被験者の同意」という実体的要件の充足も必要となる。しかし、かかる実体的要件と、倫理委員会による審査等の手続的要件がいかなる関係に立つのかも、(刑)法理論的には未解明である。そこで、令和4年度は、ドイツの臨床試験法制を包括的に調査し、これを規律する法的枠組みを析出・提示することに軸足を置いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記〔本研究の全体像〕の研究①②のうち、臨床試験に関する成果として、天田悠「ドイツの医薬品承認制度―新型コロナワクチンに焦点を当てて(特集:パンデミック宣言下における緊急事態の医薬品等使用許可・承認制度に関する研究)」医事法研究5号(2022年)153-173頁を公表した。また、『医事法講座』への執筆依頼を頂いたことを契機に、ドイツの臨床試験法制を包括的に調査する機会を得た。これは、研究の視野を広げることができたという意味で、大変有益な調査であった。その調査結果の一部は、天田悠「ドイツにおける臨床研究の法的・倫理的ルールの現状と課題」甲斐克則編『医事法講座第13巻 臨床研究と医事法』(信山社、2023年公刊予定)に結実している。なお、終末期医療に関する成果は、後掲〔7.研究発表〕〔図書〕を参照されたい。 研究③に関しては、刑法読書会(2023年3月4日開催)、早稲田大学刑事法学研究会(同年3月11日開催)において、刑事法研究者を対象に、私見の構想を報告する機会を得た。また、医事法研究者を対象とした研究会(2022年11月12日開催)でも、報告を行った。これらの報告準備の過程で、研究①②に関する理解を深めることができ、また、研究会当日は、参加者から大変有益かつ真摯な助言・コメントを頂くことができた。令和5年度は、この成果を、日本刑法学会第101回大会(於:早稲田大学)で報告するとともに、所属大学紀要等で公表することを計画している。 なお、当初の計画では、ドイツの研究機関に短期滞在し、様々な調査・研究を行うことを考えていた。しかし結局、令和4年度もドイツへの出張は叶わなかった。それでも、国内で開催された各種研究会・学会にはできる限り対面で参加し、隣接領域の研究者らと意見交換を行った。 以上の点を勘案し、令和4年度の研究は「おおむね順調に進展している」との評価を与えた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度も、上記〔研究実績の概要〕の研究計画を遂行する。研究①~③の推進方策は、以下の通りである。 研究①②については、終末期医療に関するパートと臨床試験に関するパートを分けて検討する。 このうち、令和5年度上半期は、4年度に引き続き、臨床試験の分析に重点を置く。具体的には、ドイツ医薬品法(AMG)に焦点を当てる。ドイツ法は、医薬品法を柱として臨床試験を規制しているからである。この医薬品法は、被験者の同意だけでなく、倫理委員会の審査手続も仔細に規定している点で、比較法的にみて参照価値が高い。もっとも、臨床試験を規制する医薬品法第6章は、2016年に抜本的に改正され、2022年に新第6章が施行されている。この法改正の経緯を詳しく紹介する文献は、わが国にはいまだ存在しない。この点に、ドイツ医事(刑)法研究上のリサーチスペースがある。 加えて、令和5年度下半期は、終末期医療における「患者の意思」確認手続の研究に着手する。わが国では、プロセスガイドラインを契機に、患者の(推定的)意思を確認する「手続」が、学術的関心を集めている。この種の「手続」は、わが国だけでなく諸外国でも盛んに議論されているため、日本法を相対化するという意味でも、比較法的検討が有益である。そこで本研究では、日本法と体系が近しいドイツ法を参照する。ドイツでは、治療中止・差控えを刑法上正当化する際、民法規定の解釈を援用する見解が有力であり、判例もこの見解を支持している。わが国に、ドイツ民法規定や個々の判例・学説を紹介する業績は多数存在するが、患者の意思確認「手続」に焦点を当てて民法規定を分析し、その刑法理論的意義を解明しようとする業績は、殆ど見受けられない。 研究③については、本計画に関連する外国語文献の収集を進める。このうち、研究遂行上有益な外国語文献については、翻訳や文献紹介を執筆・公表することも予定している。
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Causes of Carryover |
当初予定していた海外出張計画を中止したため。余剰分は、図書等の購入費用に充当する予定である。
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Research Products
(4 results)