2022 Fiscal Year Research-status Report
生体流体力学から社会物理学を包含・統合した感染リスク評価手法の開発
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22K14371
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
久我 一喜 九州大学, 総合理工学研究院, 助教 (60905727)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 感染リスク評価 / Host cell dynamics / 飛沫拡散解析 / 数値人体モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
呼吸器系の粘膜上皮に沈着したウイルス量を基にその後の増殖,生体防御反応を決定論的感染症モデルHost cell dynamics(宿主細胞,感染細胞,ウイルスRNA copiesと免疫因子の常微分方程式群)として定式化し,上気道粘膜内での3次元的なウイルス動態を明らかにする数理モデルを開発した.加えて,COVID-19のHuman challengeデータを基に数理モデルのモデルパラメータの最適化にも取り組んだ.これらの内容に関しては現在,ジャーナル論文として査読中である. さらに,室内環境中に在室している人々が接触し,咳などによって飛沫に暴露することを想定し,異なる対人距離での飛沫拡散および暴露解析を行った.対人距離が1mの時に対して2mの場合では,非感染者に吸入されるまたは皮膚表面に沈着する飛沫数が劇的に減少することが確認された. また,社会システム上での感染動態予測に対しては,感染者のウイルス濃度の時系列変化に応じて感染確率が変動する数理疫学モデルを構築した.この数理疫学モデルを静的ネットワークおよび動的ネットワークの両方に適用し,その際の感染拡大の感度を解析した.変動する感染確率を静的ネットワークに適用すると感染者数のピーク数と時間は変動するものの,最終的な感染者数は変動しないことが明らかになった.一方で,動的ネットワークに適用した場合は,感染者数のピーク数と時間及び最終的な感染者数も増加することが明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Host cell dynamicsモデルによるウイルス動態予測モデルは既に構築し,SARS-CoV-2にも適用が可能であることを確認している.来年度においては,その他のウイルス(結核菌やインフルエンザウイルスなど)への適応を引き続き行っていくことが可能である.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,様々なウイルスを対象に研究を進めていくと共に下気道にも焦点を当て,ウイルス感染現象を取り上げていく.室内環境での飛沫拡散解析では,飛沫がどのように飛散するのかより詳細な議論が可能になるよう口腔内の幾何形状を再現した数値人体モデルを構築し,気道内からの飛沫発生のモデルを構築していく.社会システム上での感染動態解析の数理疫学モデル開発では,年齢構造に応じた接触ネットワークを構築し,その感染伝播の様子を捉える.
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Causes of Carryover |
本年度はコロナの影響により出張等に行く機会が限られたため,旅費での支出が少なかった.一方で実験および数値解析に必要な備品を購入した.残額は数万円であるので,次年度の旅費と物品費に併せて使用する.
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Research Products
(7 results)