2022 Fiscal Year Research-status Report
神経回路特異的遺伝子操作による2つの下行性疼痛制御系の相互作用解析
Project/Area Number |
22K15206
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
古賀 啓祐 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (50835189)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 痛み / 脊髄 / 青斑核 / 吻側延髄腹内側部 |
Outline of Annual Research Achievements |
痛みは外傷や刺激により引き起こされ、生体の警告系として重要な役割を果たすが、過度な痛みや慢性痛は患者のQOLを著しく下げるため、適切なコントロールが必要である。痛みの調節には脳内で痛み強度を調節する内因性疼痛制御系が関与しており、ノルアドレナリン(noradrenaline)神経核の青斑核や、セロトニン(serotonin)やGABAを神経伝達物質として用いる吻側延髄腹内側部といった下行性神経核は、脳から痛みの入り口である脊髄へ下行性に投射して痛みのコントロールに重要な役割を果たす。しかしながら、これらの下行性神経核の相互連関については不明な点が多い。本研究では、上記2つの下行性神経核の相互作用とそのメカニズムの解明を目的として研究を行った。本年度は、これらの2つの神経核を特異的に操作する実験系を立ち上げ、電気生理学的な解析、形態学的解析、行動学的な解析を行った。ウイルスベクターを用いた神経核特異的な遺伝子導入と形態学的解析から、これらの神経核の相互作用を示唆するデータが得られた。これらの神経回路を特異的に制御する実験系による行動学的な解析の結果から、この2つの神経核により構成される回路が痛みの調節に重要な神経回路であることが見出された。さらに、電気生理学的な解析から相互作用に重要な受容体候補を特定した。今後はAAVベクターとCRISPR-Cas9システムを組み合わせることで、この受容体のノックダウンの実験系を立ち上げて、痛み行動の解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
行動学的な解析から2つの下行性神経核の相互作用が痛みの調節に重要であることを示唆するデータが得られた。さらに、電気生理学的な解析からこの神経伝達に重要な受容体を特定することができたため、本年度の研究計画は予定通りに達成できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度における検討項目が計画通りに達成できたことから、次年度は受容体のノックダウン実験を進める。受容体ノックダウンにはAAVとCRISPR-Cas9を用いたノックダウンシステムを用いる。そのために、この受容体を標的とするガイドRNAを作成する。このガイドRNAを組み込んだAAVベクターを作出し、実験動物に処置、行動学的な解析を進めることで2つの下行性神経核の相互作用が痛みの調節の痛覚処理における役割の詳細解析を進める。
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Causes of Carryover |
購入を予定していた一部物品が納品が間に合わなかったため。また、今年度は旅費を別の研究費から支出したため、来年度に旅費を繰り越して使用する予定である。
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Research Products
(6 results)