2022 Fiscal Year Research-status Report
ダウン症モデルマウスの神経発生異常に関わる分子機構の解明
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22K15212
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
内藤 泰樹 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (10895923)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 大脳新皮質 / 神経発生 / ダウン症 / 神経前駆細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
ダウン症はヒト21番染色体のトリソミー(3倍体化)に起因し、精神発達遅滞や身体的発達の遅延といった症状がみられる。また、大脳新皮質を含む様々な脳領域で神経細胞数の減少が確認されている。これまでダウン症モデルマウスで脳の発生を研究することにより、神経細胞が減少するメカニズムが調べられてきているが、ヒト21番染色体のいずれの遺伝子の発現量の増加によって、神経発生のどのプロセスが影響をうけているのかについては充分には理解が進んでいない。 本研究では、ダウン症モデルマウスを利用して、大脳新皮質を構成する興奮性の神経細胞と抑制性の介在神経細胞の産生異常のメカニズムを細胞レベル、分子レベルで明らかにすることを目的としている。大脳新皮質の興奮性神経細胞は発生期大脳新皮質の脳室帯に存在する神経前駆細胞から中間前駆細胞が生み出され、その中間前駆細胞がさらに分裂することで生み出される。これまでの研究により、ダウン症モデルマウスにおいて、神経細胞へ分化する割合などの中間前駆細胞の性質が変化していることが示唆されていた。本年度は、ダウン症モデルマウスにおいて中間前駆細胞の性質変化に関わる遺伝子を特定することができた。その遺伝子の発現をダウン症モデルマウスで3倍体化から2倍体化にすることによって、中間前駆細胞の性質が野生型に近づくことを確認した。また抑制性の神経細胞は内側基底核原基に存在する神経前駆細胞から産生されるが、ダウン症モデルマウスの脳においてこの神経前駆細胞数が発生初期に変化していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通り順調に進んでいる。ダウン症モデルマウスにおける中間前駆細胞の性質変化に関わる遺伝子の特定に成功した。また抑制性神経前駆細胞の産生異常の原因メカニズムに関しても重要な知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究により、ダウン症モデルマウスにおいて中間前駆細胞の性質を変化させる原因遺伝子の特定ができた。今後は中間前駆細胞特異的にCreリコンビナーゼを発現するマウスとCre存在下で遺伝子をノックアウトするfloxマウスを組み合わせることで、ダウン症モデルマウスにおいて中間前駆細胞の性質を正常化したマウスを作製する。作製したマウスを解析することにより、中間前駆細胞の性質変化がダウン症モデルマウスの大脳新皮質発生においてどのような異常をもたらしているかを明らかにする。また抑制性の神経細胞に関しては、内側基底核原基に存在する神経前駆細胞数が変化することが分かったが、どのようなメカニズムによってそれが引き起こされるかは不明である。そこで神経前駆細胞の細胞分裂様式の解析を行うために内側基底核原基に存在する神経前駆細胞の培養系を確立する。確立した培養系でダウン症モデルマウスにおいて神経前駆細胞の性質がどのように変化しているかを調べ、さらにヒト21番染色体上のどの遺伝子が抑制性神経細胞の産生異常の原因となっているか明らかにする。
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