2022 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍組織滞在性メモリーT細胞の新規記憶維持メカニズムの解明
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22K15603
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
杉山 大介 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (90759375)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 組織滞在性メモリーT細胞 / がん免疫応答 / CD8陽性T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、腫瘍組織滞在性メモリーT細胞のメモリー維持機構を解明するため、免疫療法による腫瘍消失/再発マウスモデルを用いた検討を行う。本年度では、抗腫瘍免疫応答を担う腫瘍組織滞在性メモリーT細胞が作用する部位を特定するため、腫瘍接種部位と非接種部位における腫瘍生育を観察した。マウスMC38腫瘍細胞株を野生型マウスへ生着させ、抗PD-1抗体投与により腫瘍消失を確認したのち、MC38を再接種した。その際に、腫瘍消失部位と腫瘍非接種側部位の両側に腫瘍接種を行ったところ、腫瘍消失部位では腫瘍退縮が見られたのに対し、非接種部位では腫瘍生育が観察された。この結果から、腫瘍再発を阻止する抗腫瘍免疫応答作用は腫瘍消失部位に特化している可能性がある。また、再接種後の腫瘍再発の阻止がみられたマウスについて、再度腫瘍接種を試みたところ、腫瘍消失初期から3ヶ月後にもかかわらず腫瘍再発が阻止された。腫瘍消失から3ヶ月を経過すると再発が阻止されないことから、3ヶ月を経過する前に腫瘍抗原を暴露することで組織滞在性メモリーT細胞のメモリー機能が維持されると考えられる。今年度の研究結果から、組織滞在性メモリーT細胞のメモリー維持機構は腫瘍接種部位にて構築されること、そのメモリー機能は抗原暴露により保持できる可能性があることが示唆された。これらの作用メカニズムを解明することで、組織滞在性メモリーT細胞を多く発生させる方法および維持させる方法や、組織滞在性メモリーT細胞を腫瘍非接種部位へ誘導する方法の開発につながると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究開始直後に、NGS解析用デスクトップパソコンの不具合が生じ、急遽解析用デスクトップパソコンを購入する必要があった。そのため、当初予定していた研究に使用する研究費が減少したため、研究計画の変更を余儀なくされた。また、研究計画を見直し、組織滞在性メモリーT細胞の詳細な解析を行うためには、腫瘍抗原特異的T細胞を検出し、かつシングルセルRNAシークエンス解析を行う必要性を感じ、これらを達成するための新規マウスモデルの構築について構想を練ったため、実際の研究に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
組織滞在性メモリーT細胞のメモリー維持機能を解明するため、腫瘍抗原特異的T細胞を検出できる新規マウスモデルの構築に着手する。これにより、腫瘍環境において活性化したT細胞を半永久的に追跡できるマウスモデルを作成し、腫瘍消失時期別の組織滞在性メモリーT細胞を用いたシングルセルRNAシークエンス解析を実施する。シングルセルRNAシークエンス解析ではT細胞以外の免疫細胞についても解析し、組織滞在性メモリーT細胞のメモリー維持に関わる包括的免疫応答の理解を深める。
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Causes of Carryover |
本年度では、腫瘍組織常在性メモリーCD8陽性T細胞の新規メカニズムを解明するため、NGSを用いた網羅的遺伝子発現解析を実施する予定であった。しかし、当該細胞について抗原特異性や長期記憶のトレースが重要であると考え、想定していたNGS解析に使用する研究経費を次年度以降へ持ち越すこととした。
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