2022 Fiscal Year Research-status Report
多発性硬化症患者iPS細胞を用いた血液脳関門破綻候補遺伝子の同定とその臨床応用
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22K15711
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
西原 秀昭 山口大学, 医学部, 助教(連携講座) (50780798)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 多発性硬化症 / 血液脳関門 / iPS細胞 / 免疫細胞浸潤 |
Outline of Annual Research Achievements |
欧州の再発寛解型多発性硬化症患者(relapsing-remitting multiple sclerosis: RRMS)4例と健常人3例から作製したiPS細胞(MS患者7株,健常人6株)を研究代表者が独自に開発した方法(Nishihara et al. FASEBJ 2020)で血液脳関門(blood-brain barrier: BBB)構成内皮細胞に分化誘導した.MS患者由来BBB構成内皮細胞では剖検脳同様にBBB破綻をin vitroに再現することができた.その原因となる分子機構を解明するためにBBB構成内皮細胞からRNAを採取し,RNA-seq解析を施行した.発現変動遺伝子を用いたreactome pathway 解析を行い,MSでのBBB破綻に関係する分子機構を検索した.健常人とMS患者由来のBBB構成内皮細胞を比較し,炎症性サイトカインの存在しない条件下で400を超える発現変動遺伝子を同定した.発現変動遺伝子を元にしたreactome pathway解析の結果と,それぞれの候補遺伝子の分子機能,生物学的プロセス,細胞内局在を検討し,BBBの発達,維持に重要とされる分子を2つ(X, Y),過去にBBBに対する機能は報告がないものの,内皮細胞の増殖に関与する分子を1つ(Z)同定した.各候補遺伝子のノックダウン方法を確立し,候補遺伝子Zに対しては小分子を用いた阻害実験を行うことで,健常人由来BBB構成内皮細胞にMS類似のBBB破綻が再現されるかを検討した.健常人由来BBB構成内皮細胞の候補Z機能を小分子により阻害することで,tight junction構成蛋白質であるclaudin-5の発現が低下し,小分子の透過性が亢進すること,つまり既報(Nishihara et al. Brain 2022)で報告したMS同様のBBB破綻が再現できることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多発性硬化症患者由来iPS細胞を用いることで,脳内サンプルが得られないという問題を克服し,BBB構成内皮細胞を分化誘導することでBBB構成細胞に起因する病因を同定し,創薬ターゲットとする論理的基盤を確立するための研究である.研究代表者が国外で確立した方法を日本国内で再現するために,当初は国内での入手可能物品の違いなどから方法論の再確立に時間を要した.しかし,その成果が英文誌(Matsuo K et al. JoVE 2023 accepted)に採択され,同方法を用いて同定した候補分子の機能解析体制を構築できた.また,新たに日本人MS患者10例をリクルートし,次年度に行う日本人MS患者由来BBBモデル作製の準備を整えたことからはおおむね順調に進展していると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度に同定した3候補それぞれに対して,小分子や遺伝子改変を用いてiPS細胞由来BBB構成内皮細胞に対する機能解析(小分子の透過性や免疫細胞の浸潤)を行うことで,BBBを直接的に標的とした創薬の論理的基盤を確立する. また,日本人MS患者由来のiPS細胞から日本人MS患者由来BBBモデルを作製することで日本人MS患者にBBB破綻の遺伝的素因が存在するかを検討すること,欧州MS患者と日本人でBBB破綻素因が共通するかを明らかにすることを予定している.
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Research Products
(9 results)