2023 Fiscal Year Annual Research Report
白血病のエピジェネティクス制御因子の変異によって生じる分子異常の解明
Project/Area Number |
22K16320
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
越智 陽太郎 京都大学, 医学研究科, 助教 (40883707)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 急性骨髄性白血病 |
Outline of Annual Research Achievements |
急性骨髄性白血病は予後不良の造血器腫瘍で、侵襲性の高い化学療法や造血幹細胞移植が根治的治療に用いられる。しかし、特に忍容性の低い高齢者においては、有効性のみならず安全性も高い新規治療法の開発が望まれる。本研究では、白血病に高頻度に認められるエピジェネティクス制御因子の遺伝子変異を標的とする腫瘍特異的治療の開発を目指し、分子病態の解明を行う。特に、コヒーシン遺伝子変異が広範な転写異常をもたらすこと(Ochi et al., Cancer Discovery 2020)に注目し、エンハンサーや転写装置を標的とした治療薬の有効性と分子機序を検証する。 ゲノム編集によって、コヒーシン遺伝子変異を含む複数のエピジェネティクス遺伝子変異の組み合わせを有する白血病細胞株を数種類樹立した。これらの細胞株を応用し、エピジェネティクスに作用する既存候補薬剤の有効性をin vitroで検証したところ、いくつかの候補薬剤は遺伝子変異下で特異的に増殖抑制効果を発揮した。この細胞株を免疫不全マウスに移植した生体モデルでも、同様に変異陽性腫瘍の増殖抑制効果が認められた。また、古典的抗癌剤との併用療法によって腫瘍抑制効果はさらに増強された。さらに、薬剤投与前後検体のオミクス解析を通じ、CLK阻害剤が遺伝子変異陽性株に対して濃度依存的にRNAポリメラーゼの転写を抑制していることを明らかにした。最後に、種々の遺伝子変異を有する患者腫瘍組織移植モデルを複数作成した。これにより、今後は患者由来検体に対しても同様の薬効試験を展開し、変異を標的とする層別化治療の有効性を検証していくことが可能となった。
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