2022 Fiscal Year Research-status Report
卵巣明細胞がんの腫瘍免疫機構の解明と新たな免疫療法の探索
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22K16868
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
村上 幸祐 近畿大学, 医学部, 講師 (60734671)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 卵巣明細胞癌 / 腫瘍免疫 / Th17 / IL-6 / RORC / CD4 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度はヒト臨床サンプルを用いた解析をおこなった。卵巣明細胞癌のFFPE12サンプルの免疫組織化学をおこなったところ、腫瘍内浸潤CD8陽性細胞は極めて少なく、一方で、CD4陽性細胞及び腫瘍促進的なM2マクロファージのマーカーであるCD163陽性細胞が非常に多く浸潤していることが判明した。京都大学の卵巣明細胞癌40例、高異型度漿液性癌13例のRNAシーケンシングのデータを入手し、CIBERSORTxで解析すると、免疫組織化学と同様にCD4陽性T細胞及びM2マクロファージの比率が高いことがわかった。また、卵巣明細胞癌はIL-6産生腫瘍であることが知られているが、このデータセットにおいても、高異型度漿液性癌と比較してIL-6の発現が有意に高かった。続いて、明細胞癌特有のIL-6高産生環境が、腫瘍内に浸潤するCD4陽性細胞の分化にどのように影響を及ぼしているかに着目した。CD4陽性細胞は大きく分けてTh1、Th2、Th17、Tregというフェノタイプに分化する。中でも、IL-6の存在下ではTh17への分化が誘導されることが知られている。そこで、Th1、Th2、Th17、Tregのそれぞれのマスター転写因子であるTBX21、GATA3、RORC、FOXP3の発現について調べたところ、RORCの発現は高異型度漿液性癌と比べて、明細胞癌で有意に発現が高く、他のマスター転写因子の発現と逆相関することがわかった。さらに明細胞癌を特徴づけるシグニチャー解析をおこなったところ、OCCC_UpシグニチャーのスコアとRORCの発現は有意な正の相関を示し、OCCC_DownシグニチャーのスコアとRORCの発現は有意な負の相関を示すことが明らかとなった。また、明細胞癌によく併存してみられる血栓症の病態に着目し、症例報告を責任著者として論文化し、査読付き英文誌にアクセプトされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、ヒトサンプルの解析によって明らかになった免疫ステータスに関して、マウスモデルを用いて解析を行う、という予定としている。2022年度については、ヒトFFPEサンプル及びRNAシーケンシングのデータを用いて、これまで知られていない卵巣明細胞癌の腫瘍浸潤CD4陽性T細胞の分化の方向性を明らかにすることができた。したがって、現在までの進捗状況は順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまで主に解析を進めてきた京都大学のRNAシーケンシングのデータセットは症例数が限られており、これ以上の詳細な解析や、臨床データとの関連づけは難しい。我々は、国内の大規模な臨床研究であるJGOG3025に紐づいた卵巣明細胞癌180例のRNAシーケンシングのデータ及び臨床データを2022年度中に入手した。このデータセットを用いて、これまでに得られた結果のバリデーションを行うとともに、明細胞癌に特有のCD4陽性細胞の分化の方向性によってもたらされる免疫状態の特徴を解析していく。さらにその結果に応じてマウスの実験に落とし込んでいくための準備も並行して進めていく予定である。
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Research Products
(2 results)