2022 Fiscal Year Research-status Report
細胞外小胞の構成分子に着目した環境中微粒子の疾患誘発メカニズムの解明
Project/Area Number |
22K18035
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石川 良賀 京都大学, 工学研究科, 特定助教 (10914161)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 環境中微粒子 / PM2.5 / 細胞外小胞 / オミクス解析 / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
PM2.5などに代表される環境中微粒子は、慢性閉塞性肺疾患や気管支喘息、アレルギー性鼻炎のような呼吸器系、免疫・アレルギー系疾患を誘発あるいは悪化させることが知られているが、その詳細な分子メカニズムに関しては未解明な部分が多い。本研究では、細胞間の情報伝達の担い手であり、近年様々な生命現象、疾患と密接に関連していると言われている細胞外小胞(Extracellular vesicle; EV)に着目し、環境中微粒子がEVの産生や構成分子組成に与える影響を評価し、それらの粒子種による異同を明らかにすることで、環境中微粒子が呼吸器系、免疫・アレルギー系疾患を誘発・増悪させる分子メカニズムの一端を解明することを目的とした。本年度は、ヒト肺胞上皮細胞A549において、特性の異なる様々な環境中微粒子(黄砂、ディーゼル排気微粒子、酸化チタン粒子)を種々の濃度で曝露し、細胞毒性および環境中微粒子の細胞内取り込みを評価し、ナノ粒子トラッキング解析やウエスタンブロットなどにより、培養上清中におけるEVの放出量および粒子径の変化などについて検討した。その結果、環境中微粒子の曝露によりA549細胞由来EVの産生量が増加する傾向にあることが分かり、特に、黄砂やディーゼル排気微粒子のような細胞毒性の高い微粒子を曝露した際にその増加が顕著であることが明らかとなった。一方で、微粒子自体の細胞内取り込みとEVの産生の変動についての相関は認められず、またEV粒子径の変化も確認されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題はおおむね順調に進展していると考えられる。一部、未検討事項が残されているものの、当初の計画通り、特性の異なる様々な環境中微粒子を用いて、環境中微粒子-細胞間の相互作用評価、およびEVの単離と基礎物性評価を行い、環境中微粒子がEVの産生・性質に与える影響や、粒子種による異同について一定の知見が得られており、次年度の研究の更なる進展が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度においては、初代肺胞マクロファージやRAW細胞などの呼吸器免疫細胞を曝露対象に追加し、種々の環境中微粒子を曝露した際のEVの産生および性質に与える影響について昨年度に続けて検討を進める。また、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS/MS)を用いて、環境中微粒子曝露後に産生されるEV中に含まれるタンパク質の発現プロファイル変化を評価することで、新規バイオマーカー候補を探索する予定である。
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Causes of Carryover |
マウスより単離した初代肺胞マクロファージを用いた曝露実験についても当該年度において検討する予定で予算を計上していたが、種々の環境中微粒子の曝露条件を検討をする上で、A549細胞を用いた評価系の方が効率的に条件検討を行えると判断したため、計画を一部変更し、未使用額が生じた。次年度では、実施予定であったex vivo実験においても注力し、今年度で見出した曝露条件で初代肺胞マクロファージ由来EVを単離、解析する検討において予算を使用する。
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