2023 Fiscal Year Research-status Report
環境水中の腸内細菌科細菌が保有する薬剤耐性プラスミドの構造解析及び伝達性評価
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22K18038
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
五味 良太 京都大学, 工学研究科, 助教 (30794284)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 薬剤耐性菌 / ゲノム解析 / プラスミド / 腸内細菌科細菌 / 大腸菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、抗生物質が効かない細菌 (=薬剤耐性菌)が世界中で増え、大きな問題となっている。薬剤耐性菌は既に世界中で120万人以上/年の死因となっており、このまま薬剤耐性菌の増加が続くと、諸説あるものの、2050年には約1000万人/年の死因になると予測されている。薬剤耐性の拡散には、プラスミドと呼ばれる環状DNAが大きな役割を果たしていることが知られているが、環境水中の薬剤耐性菌が保有する薬剤耐性プラスミドの塩基配列や構造についてはよくわかっていない。本研究では、環境水中から薬剤耐性菌を単離し、その細菌が保有している薬剤耐性プラスミドの塩基配列及び構造を大規模に決定し、さらにそれらプラスミドの伝達性を評価することを目的とした。 2023年度は、前年度および本年度に塩基配列を決定したプラスミドの配列の詳細な構造及び、薬剤耐性遺伝子の周辺構造(挿入配列やトランスポゾンといったmobile genetic elementsを含む、薬剤耐性遺伝子周辺のDNA配列)の解析を行った。その結果、今回対象とした薬剤耐性遺伝子である可動性キノロン耐性遺伝子は、同一遺伝子でも様々なタイプのプラスミド上に存在することが判明し、また周辺構造も多様であることが判明した。これらの周辺構造には、以前臨床分離株で報告されているものも含まれる一方、全く新しい構造も散見された。また、可動性キノロン耐性遺伝子は、頻繁に染色体に組み込まれることがわかった。 本研究ではさらに、環境水の一種として、都市部の水たまり中の大腸菌についても全ゲノム配列を決定した。薬剤耐性遺伝子や病原遺伝子の検出といった基本的な解析を行ったところ、これらの水たまり中には薬剤耐性大腸菌や病原性大腸菌も存在することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
菌種は腸内細菌科細菌のうち大腸菌のみに絞ったものの、薬剤感受性試験やプラスミド配列の決定など、当初の予定通り進めることができたため。特にプラスミドについては、薬剤耐性遺伝子を含まないものも含めると、100個ほどの塩基配列を決定できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、プラスミドを含む全塩基配列の決定および、バイオインフォマティクス解析を進めていく。また、決定した塩基配列を公共データベース上で公開し、世界中の研究者が恒久的にデータにアクセスできるようにする。
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Causes of Carryover |
DNA決定を、外注により行ったが、当初想定していたよりも安い価格で外注できたため。また、得られた塩基配列データの質が良く、追加解析が必要なかったため。次年度は、さらに塩基配列を決定する菌株数を増やす予定であり、そのための試薬購入費用や外注費用に使用する予定である。
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