2022 Fiscal Year Research-status Report
結晶粒ダイナミクスのその場観察:PT型マントル対流における岩石流動研究の新展開
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22K18282
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
久保 友明 九州大学, 理学研究院, 教授 (40312540)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
肥後 祐司 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 回折・散乱推進室, 主幹研究員 (10423435)
坪川 祐美子 九州大学, 理学研究院, 助教 (40824280)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2026-03-31
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Keywords | 相転移カイネティクス / 高温高圧 / 放射光 / 結晶粒 / 回折斑点 / 高時空間分解能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に、1)偏向電磁石BMビームラインにおけるプレス揺動機構とΔω法を利用した回折斑点数の定量化(申請書記載の技術A)、2)そのNaNiF3ポストペロブスカイト相転移およびMg2SiO4のポストスピネル相転移への応用(研究AB)、3)可動式角度高分解能検出器の検討(技術B)、4)挿入光源IDビームラインにおける高圧脱水反応の高速時分割測定(技術C研究C)、に取り組んだ。1)では既存のCCDやIPを用いて2次元X線回折測定を行い回折斑点数の定量化を確認しつつ、その散乱角および方位角分解能のカメラ距離依存性を検討した。特に粒径数ミクロンのペロブスカイト多結晶体試料において、カメラ距離を最大3.3mまで伸ばすことで、散乱角および方位角方向ともに分解能が向上することを確認し、細粒粒子の回折斑点の検出や高分解能での差応力測定への応用が期待された。2)では通常のカメラ距離において、Δω法を用いたポストペロブスカイト相転移実験を行い、回折斑点挙動から新相粒子の核生成-成長カイネティクスのその場観察に成功した。また差応力場におけるポストスピネル相転移では、アキモトアイト+ペリクレイスを経てブリッジマナイトが出現する際に、より巨大な共析コロニーが出現することを回折斑点挙動から見出した。3)では20x15cmのフラットパネル型2次元検出器を新規に購入し、放射光ビームラインでの測定テストを行った。予備的データではあるが、BM光を用いた3.3mの超長カメラ距離測定においても、これまでより短時間の10秒程度の露出で回折斑点の測定が可能であることを確認した。さらに4)では、MA型高圧装置と高エネルギーID単色光を組み合わせ、アンチゴライトの高圧脱水カイネティクスをその場観察した。従来より3桁程度速い0.1秒毎の高速測定に成功し、それによって新しい準安定脱水反応を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)および2)では、既存のBM光を用いて地球深部で重要な特徴ある相転移の核生成と成長の回折斑点挙動のその場観察に成功した。また超長カメラ距離での測定でも分解能の向上が認められている。3)では検出器の価格高騰により当初の予定より小さい面積の二次元検出器を購入せざるを得なかったが、設置方法を工夫することでその問題も克服できそうである。4)のID光による高速測定では期待以上のクオリティの時分割データが得られ、新規現象の発見につながった。このように、いまだ予備的段階ではあるが、それぞれの取り組みにおいて空間分解能、時間分解能ともに既存の手法に比べ著しく向上することが期待される結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)2)については、それぞれの相転移について、より系統的に温度や過剰圧を変えたカイネティクス実験を行い、回折斑点挙動から個々の粒子のカイネティクスを制約することを目指す。3)については、超長カメラ距離においてyz方向へ可動できるステージを導入して角度高分解能2次元検出器システムを完成させ、bulk-rock dynamicsとgrain-scale dynamicsの両方をルーチンに測定できるようにし、高圧相転移実験や変形実験中の粒径進化のその場測定に応用していく。4)については、当初オリビンースピネル相転移への適用を考えていたが、22年度に取り組んだポストアンチゴライト反応やオリビンの脆性ー塑性転移条件付近での不安定スベリにも適用していく。高速測定に加え、μビームを用いたマッピングによる高空間分解能測定にも着手する。そのための実験セルの開発等も進める。
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Causes of Carryover |
初年度はX線検出器の購入とそれを用いたテスト測定、また超長カメラ距離でのテスト測定などに時間を費やしたため、D111型装置等を用いた高圧実験の回数が当初予定より少なくなり、それにともないアンビルの消費量が減少した。また当初購入予定であった検出器の制御に用いるPCについて、初年度は既存のPCを用いてテスト測定を行うことで必要なスペックを検討してきた。そのため次年度使用額が生じている。次年度はその分、D111型装置を用いた高圧変形実験の回数が増えアンビルの消耗が予想され、また高速時分割測定を見据えてよりハイスペックのPCを検出器の制御に用いる必要がある。次年度使用額は主に、アンビルと検出器制御用のPCの購入にあてる。
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Research Products
(6 results)