2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K18334
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山本 拓矢 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (30525986)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2026-03-31
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Keywords | PEG |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、環状トポロジーに立脚した新奇高分子材料開発を目的としている。金ナノ粒子は触媒やエレクトロニクス、医薬品など幅広い分野で使用され、近年注目を集めている。しかし、金ナノ粒子は、条件によっては容易に凝集することでその優れた特性を失ってしまう。そのため、生体適合性のポリエチレングリコール(PEG)の末端をチオールなどで修飾し、金ナノ粒子に化学吸着させることで分散安定性を確保することが一般的である。これに対し、単環状PEGの物理吸着を用いて金ナノ粒子の分散安定化に成功している。これは、ポリマートポロジーに着目した研究であり、さらなる応用が期待される。 ここで、環状PEGの金ナノ粒子に対する優れた吸着特性は、環化によって取りうるコンフォメーションが制限され、物理吸着時のエントロピー減少が直鎖状分子よりも小さいためであると考えられる。すなわち、複数の環を持つポリマーは単環状ポリマーに比べ、物理吸着時のエントロピー減少がさらに小さく、より吸着しやすいため分散安定化に優れると考えられる。そこで、本研究では分子内に二つの環を有する8の字型PEG(8-shape)に代表される多環状高分子を合成し、金ナノ粒子の分散安定化について単環状PEG(c-PEG)と比較検討を行った。まず、4本鎖星型PEG(4-arm)を用いて、8-shapeの合成・精製を達成した。分散安定性試験の結果、8-shapeはc-PEGを上回る分散安定性を金ナノ粒子に付与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究成果より、高温における8-shapeの金ナノ粒子に対するより優れた分散安定化効果が示された。さらに、金ナノ粒子への吸着量を検証するため、動的光散乱法(DLS)による粒子径測定を行った結果、c-PEGと8-shapeを添加した金ナノ粒子水分散液の粒子径を比較すると、8-shapeはc-PEGに比べより厚いPEG層を形成することで分散安定化が促進されることが明らかとなった。このように合成法の確立とトポロジーに依存した興味深い物性を見出したため、研究は概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、分子内に3つ以上の環を有する多環状PEGを合成し、環の個数やサイズが金ナノ粒子の分散安定性に及ぼす影響について検討する。また、Spring-8においてX線散乱などを行うことで、多環状PEG単体に対してナノ粒子に複合化させた際の構造変化について解析を進める。ここでX線散乱法とは、試料に対してX線を入射することで散乱したX線を検出器で得る手法であり、散乱する角度により、広角散乱(WAXS)、広角回折(WAXD)、中角散乱(MAXS)、小角散乱(SAXS)、超小角散乱(USAXS)と区別され、散乱体の大きさ、構造形態、粒子間相互作用といった幅広い情報が得られるため、こられを利用し高分子トポロジーの影響を検討するものである。
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Causes of Carryover |
一部、海外製の物品が、原料調達および流通の問題から年度内に入手できなかったため、次年度使用額が生じた。これらの物品を次年度に速やかに手配し、予定額を執行する。
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