2022 Fiscal Year Research-status Report
種間交雑に起源するミトコンドリアの新たな共生関係の進化
Project/Area Number |
22K18370
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
山平 寿智 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (20322589)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北野 潤 国立遺伝学研究所, ゲノム・進化研究系, 教授 (80346105)
楠見 健介 九州大学, 理学研究院, 講師 (00304725)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / ヘテロプラズミー / メダカ / 共生 / 種間交雑 |
Outline of Annual Research Achievements |
種間交雑による雑種胚では精子由来のミトコンドリアが分解されず,2つのミトゲノムが共存するヘテロプラズミーという状態になることがある.ヘテロプラズミーは通常集団中から速やかに除去されるが,申請者らは近年,古代の種間交雑に起源するヘテロプラズミーを,スラウェシ島の古代湖に生息するメダカ(マタネンシスメダカ)で発見した.本研究の目的は,この異種由来のミトコンドリアがどのように宿主による排除機構の網をかいくぐり,独自の機能を獲得して新たな共生関係を築き上げてきたかを解明することにある.
マタノ湖から採集されたマタネンシスメダカについて,PCR-Sangar-seqでヘテロプラズミー個体のスクリーニングを行ったところ,4個体のヘテロプラズミー個体を発見することができた.これらのヘテロプラズミー個体をそれぞれIllumina-seqにかけて,ショートリードをde novoでアセンブリしたところ,それぞれについて2本のミトコンドリアの配列のほぼ全長を決定することができた.このうち1つはマタネンシスのオリジナルのハプロタイプであったが,もう1つは近縁で隣のマハロナ湖に生息するマーモラタスメダカのハプロタイプに近いことがわかった.また,このマーモラタス由来のミトコンドリアのコーディング遺伝子は全て読み枠は正常であるが,現存のマーモラタスのハプロタイプとは配列が異なっていること,そして,塩基置換の多くが非同義であり正の淘汰を受けて急速に進化したことも明らかとなった.さらに,Illumina-seqのショートリードから核ゲノムのSNPsの解析を行ったところ,ヘテロプラズミー個体とホモプラズミー個体との間に明瞭な集団分化が見られることも明らかになった.ヘテロプラズミー個体とホモプラズミー個体のミトコンドリア呼吸鎖酵素の活性を測定・比較するため,肝臓からミトコンドリアを抽出する予備実験も行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍で採集調査が延期になったが,過去に採集したサンプルを使って解析を進めることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
新たに採集調査を計画しており,計画に大きな変更が強いられることはないと思われる.
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Causes of Carryover |
コロナ禍でインドネシアでの採集調査が今年度に延期になった.採集調査後は計画書通り研究を遂行することができると見込んでいる.次年度使用額(527万円)は,試薬や消耗品費(約100万)海外旅費(約100万円),飼育補助員雇用費(約100万円),および次世代シーケンス代(約200万円)に使用予定である.
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