2024 Fiscal Year Research-status Report
種間交雑に起源するミトコンドリアの新たな共生関係の進化
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22K18370
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| Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
山平 寿智 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (20322589)
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| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北野 潤 国立遺伝学研究所, ゲノム・進化研究系, 教授 (80346105)
楠見 健介 九州大学, 理学研究院, 講師 (00304725)
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| Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2026-03-31
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| Keywords | ミトコンドリア / ヘテロプラズミー / メダカ / 共生 / 種間交雑 |
| Outline of Annual Research Achievements |
種間交雑による雑種胚では精子由来のミトコンドリアが分解されず,2つのミトゲノムが共存するヘテロプラズミーという状態になることがある.ヘテロプラ ズミーは通常集団中から速やかに除去されるが,申請者らは近年,古代の種間交雑に起源するヘテロプラズミーを,スラウェシ島の古代湖に生息するメダカ(マタネンシスメダカ)で発見した.本研究の目的は,この異種由来のミトコンドリアがどのように宿主による排除機構の網をかいくぐり,独自の機能を獲得して新たな共生関係を築き上げてきたかを解明することにある. 本年度は,マタノ湖からメダカをランダムに採集し,昨年度新たに設計したプライマーを用いて現地でPCRと電気泳動を行い,ヘテロプラズミー個体とホモプラズミー個体とを活かした状態で判別した.判別されたヘテロプラズミー個体とホモプラズミー個体を日本に持ち帰る準備を進めたが,現地での手続き上のトラブルにより輸送がかなわなかった.そこで,再度マタノ湖に出向いて採集と生体の輸送を行い,ヘテロプラズミー個体を18個体(オス8メス10)持ち帰ることに成功した.これらの個体を用いて,ヘテロプラズミーの遺伝様式や,ヘテロプラズミー個体とホモプラズミー個体との呼吸活性の比較実験を行う予定である.また,RNA-seqを用いて,ヘテロプラズミー個体の2つのミトコンドリアゲノムが,どちらも発現していることを確認する. 加えて,ヘテロプラズミーの起源が,近隣の湖に生息するマーモラタスメダカ(マーモラタス)との古代の交雑にあることを検証すべく,コアレセント理論に基づいて集団動態履歴の推定を進めつつある.本年度は,マタネンシスやマーモラタスほかマリリ湖群のメダカ集団の全ゲノムデータを取得し,サイト頻度スペクトラムのデータをまとめた.
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
飼育実験に必要な生体の採集と輸送に成功したことから,「おおむね順調に進展している」と判断した.
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| Strategy for Future Research Activity |
現地から採集して持ち帰ったヘテロプラズミー個体とホモプラズミー個体を用いて,いくつかの飼育実験を行う.まず,ヘテロプラズミーの遺伝様式を調べる.ヘテロプラズミー個体同士のペアから多数のF1個体を採取し,全てのF1がヘテロプラズミーかどうかの確認を行う.また,ヘテロプラズミー個体とホモプラズミー個体とで,生化学的手法で呼吸活性の比較を行い,異質なミトコンドリアを有するヘテロプラズミー個体における,潜在的な適応度上のデメリットの有無を確認する.また,実験室でヘテロプラズミー系統とホモプラズミー系統を確立し,今後の様々な実験に用いる個体を確保する.RNA-seqによる2つのミトコンドリアゲノムの発現確認の他,ヘテロプラズミー個体とホモプラズミー個体の交配による,精子ミトコンドリアの残存の可能性などを検証する予定である. また,全ゲノムデータを用いた集団動態履歴の推定作業も継続する.様々な交雑モデルを構築し,本年度得られたサイト頻度スペクトラムを用いて,どのモデルが最適かをシミュレーションで最尤比較する.
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| Causes of Carryover |
室内実験に用いる野生個体を採集して日本に輸送する計画でいたが,空港での輸出手続きのルールが2024年以降変更になっており,一度目の野外採集で得た生体を日本に持ち帰ることができなかった.飼育実験は本課題の遂行上不可欠であるため,再度野外採集を行わざるをえなかった.二度目の野外採集では無事に飼育実験用の生体の持ち帰りに成功した.本年度は,持ち帰った成体を用いて,様々な交配実験と呼吸活性の測定を行う予定である.次年度使用額は,飼育実験に必要な人件費(飼育補助),ならびに呼吸活性の測定に必要な物品費に充てる予定である.
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