2023 Fiscal Year Research-status Report
DNAメチル化障害とその量的形質遺伝子座を用いた健康支援研究のモデル開発
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22K18403
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
井原 一成 弘前大学, 医学研究科, 教授 (10266083)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中路 重之 弘前大学, 医学研究科, 特任教授 (10192220)
森信 繁 吉備国際大学, 保健医療福祉学部, 教授 (30191042) [Withdrawn]
谷澤 薫平 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 准教授 (50771812)
岩本 和也 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (40342753)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | DNAメチル化 / BDNF遺伝子 / mRNA / 環境 / 量的形質遺伝子座 / 全ゲノム解析 / 血清 mature BDNF |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年から2023年の間に行われた疫学的調査の参加者1145人分(3年間のうち2回以上参加した人は重複分を除く)の全血サンプルと血清サンプルとを用いて、DNAのメチル化解析と血清BDNF値の測定を試みた。 弘前大学において保存しておいた全血サンプルから1064人分のDNAを抽出し、このうちquality checkを通過したのは1060サンプルで、年度末までに1034のbisulfite処理を完了した。 これらの検体についてメチル化率を測定するCpGサイトの検討を行った。まず井原と分担研究者の谷澤と岩本とで先行研究を参考に、BDNF遺伝子のプロモーター領域から3つのCpGサイトを測定標的として選定した。次いで、岩本が、それぞれのCpGサイトを含む3つのプライマーをデザインし、各CpGサイトのメチル化率測定を熊本大学において試行した。1つ目のプライマーは15のCpGサイトを標的とするようにデザインして、このうち6サイトでメチル化率の測定値を得た。2つ目と3つ目のプライマーでは、それぞれ10と4サイトを標的にして、それぞれ4サイトずつの測定値を得た。つまり最初に注目した3CpGサイトを含む計14CpGサイトのメチル化率を試行的に測定出来たが、いずれもメチル化率は1~数パーセントで環境のメチル化率への影響を検討するには低値であった。岩本が本研究以外のモデルサンプルでメチル化率を測定したが、どのサイトもほぼ同じパーセントであった。 血清サンプルについては、1145人中1133人分について測定可能な量が保存されていた。これらのサンプルについて、mature BDNF ELISAキットを用いて測定し、1133の血清mBDNF値を得ることが出来た。 メチル化解析の効率を向上させるために、共用研究設備整備支援事業に申請しメチル化解析に用いるPyrosequencerを導入した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年までに収集した全血サンプルと血清サンプルの9割以上からDNAを抽出するとともに、血清mBDNFの測定値を得ることが出来た。全血サンプルには検査会社から生化学検査後の血液を入手したものが含まれており、収集保管状況からDNAの抽出が出来ない可能性のあることが危惧されたが十分なqualityのDNAが抽出できた。またBisulfite処理もほぼ終了した。 メチル化率の測定も実験自体は順調に進んだ。しかし、測定したCpGサイトは、環境影響をみるにはメチル化率が低かった。これ自体重要な知見であるが、本研究を進めるためにはメチル化率の高いサイトを探索する必要がある。共用研究設備整備支援事業に申請しメチル化解析に用いるPyrosequencerを導入したので、メチル化解析の効率の向上が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
メチル化解析の標的となるCpGサイトの探索と選定と測定を進める必要がある。測定は、弘前大学にPyrosequencerを導入したことによりスピートアップが見込めるので、まず、適切なCpGサイトを選定する。対象者は、健常者であるが、10~30%のメチル化率が見込まれるCpGサイトの探索のために、うつ病患者におけるBDNF遺伝子のプロモーター領域で高いメチル化率のあるサイトを参照してきたが、他の疾患も含めた先行研究からの情報報収集も必要である。 本研究は、全ゲノムシークエンスデータを利用して、メチル化率の量的形質遺伝子座を考慮しながら、遺伝子発現に与えるメチル化率と環境の関係を明らかにするものである。昨年度までの解析でのデータを対象に、遺伝子発現の指標として血清のmature BDNF値が得られたので、mature BDNFの量的形質遺伝子座の探索が可能になった。これ自体も本研究の価値を深めるものなので探索を行いたい。
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Causes of Carryover |
本研究では、全ゲノムシークエンスデータを用いてメチル化率の量的形質遺伝子座の解析を行うものである。解析は、弘前大学のスーパーコンピューターを用いて、分担研究者の谷澤があたる予定である。このため、谷澤の本務地から弘前大への交通費、弘前市への滞在費の出費を研究費に見込んでいたが、メチル化測定が年度内に完了しなかったので、それらの金額が翌年に持ち越しとなった。令和6年度は解析に係る費用に使用する予定である。
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