2022 Fiscal Year Research-status Report
A Sociolinguistic Study of Local Identity Transformed Under Globalization and Resultant Innovations in Regional Varieties of Hokkaido Japanese
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22K18475
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Research Institution | Hokusei Gakuen University |
Principal Investigator |
高野 照司 北星学園大学, 文学部, 教授 (00285503)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 新地域語 / 超地域的変種 / 言語変異 / 言語変化 / 新方言 / アイデンティティー / グローバル化 / ダイアグロッシア |
Outline of Annual Research Achievements |
グローバル化は地域社会の均質化を促進する一方で、地元帰属意識や土着アイデンティティーの復興など地域の固有性を志向する逆転イデオ ロギーの芽生えに繋がり、言語でもまた「反均質化」へ向けた変化が同時進行で進む。本研究は、グローバル化が急速に進み、異民族・異言語・異方言との接触がより日常化 する北海道の二つのコミュニティーを調査地に、1)生え抜き若年・青年層話者が創造する新しい地域語の言語的特性の記述、2)地域語創成にお いて話者の社会心理が果たす役割の検証、3)共通語化を主たる射程としてきた従来の日本語変異変化研究に新領域を切り拓くこと、さらには、 4)研究成果の国内外への発信により、グローバル化時代を背景に加速する「言語の土着化」の通言語的一般化の構築へ向けた学問的潮流を産み 出すことを目的とする。グ ローバル化が急速に進む北海道内の都市部(札幌市)と辺境コミュニティー(新ひだか町)の二地点を調査地とし、各地点の独自性、及び、二地点に共通する超地域的特性を明らかにする。 初年度である本年度は、二地点の若年・青年層世代の住民から以下の3種類の調査資料を収集した。①約10年前に全道で行った北海道方言・共通語の使用に関するトレンド調査の成果(高野2013)の追跡調査として、今日の若い世代の道産子が使う方言・共通語の実時間調査を行った。また、話者の社会心理調査も併せて実施した。新ひだか町では、静内高校の組織的協力の基、Google Formや紙媒体でのアンケート調査、札幌市では主に北星学園大学の在学生を中心に紙媒体でのアンケート調査を行った。②両地点の若い世代の住民から友人間雑談音声を収集した。③両地点の若い世代の住民から友人間ライン記録を収集した。 現時点で、Google Formによる回答は集計済み。アンケート調査回答はコード化を継続。友人間会話は文字起こし作業を継続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
採択通知のタイミングから実際の調査開始時期が9月となり、さらには昨年度後半はコロナ禍の状況が北海道内においても不安定であったため、フィールドワークが必ずしも予定どおりには進まなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度行ってきたフィ-ルドワークによる調査活動①、②、③(研究実績の概要参照)を今後も継続して行い、今年度(2023年度)秋までにはデータ収集を一端完結したい。その後、データ種に応じて、アンケート回答のコード化と集計、及び、統計的解析に入る。また、友人間の会話データやSNSデータを質的に分析するために、前者については文字起こし作業を加速させる(後者はすでに文字化されファイルとして保存)。 今後、調査地2地点でのフィールドワークについて、申請者の出身地である新ひだか町については、新ひだか町役場、商工会議所、地元の友人、親類、これまで接触してきた協力者個別のネットワークなどを活用させてもらいながら調査網をさらに拡張し、収集データを増やしていく。札幌市については主に北星学園大学の在学生の協力を中心に、卒業生が勤務するいくつかの高等学校への組織的協力も依頼する予定である。
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Causes of Carryover |
採択通知が届いたのが7月だったため、初年度調査の開始はフィールドワークの準備が整った10月以降となり、実質的には半年程度の調査活動となり、フィールドワークのための旅費やデータ整理のための謝金が年度当初に組んだ予算を大幅に下回った。 さらには、昨年度後半は、北海道内のコロナ禍の状況が様々に変化し、対面で多くの人と接する活動を伴うフィールドワークの実施にあたり、相手方から不安感や懸念が示されることも多くあり、予定していた調査を延期またはキャンセルしなければならない事態が度々発生した。また、コロナ禍により出席を予定していた国内外の学会が軒並みオンライン実施になったりなど、年度当初予定していた旅費の支出が大幅に抑えられる結果となった。 しかし、年度末頃よりコロナ禍が国内及び世界的に収束の兆しを見せ始めており、今年度は当初計画した頻度でフィールドワークに出かけ、それにより収集された大量のアンケートデータや会話音声データを処理する作業(コード化や文字起こし等)を行ってもらうため、謝金が昨年度に比べ大幅に増える見込みである。また、幸いにして、本テーマに関連する国内外の学会が対面実施に戻る傾向にある。従って、次年度は積極的にそれらの学会に参加し、学術的知見のアップデートを行ったり、成果の中間発表を予定する等、昨年度と比べ旅費の支出が大幅に増える見込みである。
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