2023 Fiscal Year Research-status Report
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22K18675
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
塩沢 裕一 大阪大学, 大学院理学研究科, 准教授 (60454518)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | ブラウン運動 / 双曲空間 / Berry-Esseen 型定理 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続いて、双曲空間上のブラウン運動に対する Berry-Esseen 型定理の研究に取り組んだ。前年度末の時点では、空間次元が 3 のときに限って Berry-Esseen 型定理を得ていた。本年度は、空間次元が一般の場合に Berry-Esseen 型定理を得ることができた。特に、収束レートは通常の Berry-Esseen 型定理と変わらないことが分かった。さらに、空間次元が 2 もしくは奇数のときには、今回得た収束の速さが精密であることも示した。
前年度末の時点では、一般の空間次元の場合を扱うために、Gruet (1996) による、推移確率の積分表示を積極的に取り入れる方針に変更した。本年度は実際に、この方針に沿って計算を実行することを試みた。しかし、先に述べた積分表示の解析が難しく、計算を進めることができなかった。そこで方針を変更し、Millson の公式と呼ばれる、異なる次元に対応する推移確率たちに関する再帰式を用いることにした。すると、この公式と部分積分の公式とを繰り返し適用することで、分布に関する計算を実行することが可能となり、Berry-Esseen 型定理を証明するに至った。
この研究成果を論文にまとめて投稿した。さらに、本成果について研究集会「Dirichlet Forms and Related Topics」および「確率解析とその周辺」で発表するとともに、結果の一般化の可能性などについて参加者と議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
双曲空間上のブラウン運動に対して Berry-Esseen 型定理を得ることができた。一方で、本研究を遂行するための方針が定まらず、想定よりも時間がかかったため、分枝ブラウン運動の解析には着手できなかった。しかし、研究計画全体としては進捗が認められる。
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Strategy for Future Research Activity |
一般の偶数次元の双曲空間上のブラウン運動に対して、Berry-Esseen 型定理における収束の速さの精密性については、現時点では不明である。精密性を解明するのが残された課題である。また、今回得た結果をより一般の確率過程に拡張する可能性について、研究集会で発表した際に参加者と議論を行ったので、本年度も議論を継続する。
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Causes of Carryover |
本研究費での支出が想定よりも少なく済んだため、次年度使用額が生じた。次年度は国内外の研究集会に招待されており、研究計画策定時には想定されていなかったものである。これらの出張旅費を次年度使用額で支出する予定である。
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