2022 Fiscal Year Research-status Report
Special solutions to discrete integrable systems and transcendental numbers
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22K18676
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
大山 陽介 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (10221839)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | q-パンルヴェ方程式 / 超越数 / q-超幾何函数 / オイラー・ポアソン・ダルブー方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、Euler-Poisson-Darboux 方程式のq-類似について研究した。Euler-Poisson-Darboux 方程式は偏微分方程式でありながら、特殊函数論的な性質を持つ方程式であり、Darbouxの曲面論にも詳しく解説されている。1980年代には、亀高惟倫、岡本和夫らの研究があり、Euler-Poisson-Darboux 方程式は超幾何函数を特殊解に含むことがわかっている。Euler-Poisson-Darboux 方程式のq-類似としては永友清和-古閑義之による方程式が得られていた(1995)が、その特殊解として表れるq-幾何函数が標準のものとは違うので、通常のq-超幾何函数を解に持つ別のEuler-Poisson-Darboux 方程式のq-類似を構成した。q-超幾何函数としてはハイネのbasic hypergeometric seriesとその退化が解になることがわかったが、微分の場合の亀高やq-類似の永友-古閑の場合と異なり、対称性が今ひとつ良くないので、今回得たEuler-Poisson-Darboux 方程式のq-類似が本当に良いものかどうかは、まだはっきりしない。 本研究は、論文にはしてないが、8月の函数方程式論サマーセミナーと9月の日本数学会で報告して、多くの方からのレビューをいただいた。三澤彰宏-筧三郎による「連立Euler-Poisson-Darboux方程式の対称性」を教えていただいたので、グラスマン多様体の上の方程式として書くことで、変数を増やすことができる(数学会の講演では軽く触れてある)。 残念ながら、本来の超越数論の研究には至っていないが、一つの足がかりになると思っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Euler-Poisson-Darboux 方程式の研究の方に進んでしまったが、離散系の偏微分方程式では超越数を扱うのは難しい(多次元系が意味がないというわけではない)。しかしながら、超幾何系を含む大きな枠組みを考察すること自体は重要なので寄り道も悪くはないと思っている。こうした総合的な判断から「やや遅れている」とした。直接的に超越数と関わる離散パンルヴェ系の研究に戻るべきかもしれない。
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Strategy for Future Research Activity |
Euler-Poisson-Darboux 方程式のq-類似自体については、学会発表からも肯定的な受け取り方をされたので、一つはこの方向で理論を整備したい。ゲルファントのグラスマン多様体上の超幾何方程式の類似物を考察することも全体の構造を見やすくするという意味では大切なので、引き続いて研究していく。 本筋であるのは、直交多項式を出発点とした離散パンルヴェ方程式の研究であり、その極限として超越数を扱うことである。非古典型直交多項式をもとにした離散パンルヴェ方程式の研究の多くは、枠組みだけで特殊解の研究が見過ごされているように思うので、原点に立ち返ることで離散パンルヴェ方程式と超越数の関係を見出すことができるだろうと考えており、こちらを本筋にしたいと思っている。
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Causes of Carryover |
コロナ3年目で後半は海外旅費を使用できるようにはなったが、当初の予定よりも海外渡航の日程を縮小したり、国内の研究会にも参加を抑制したために、予想したほどには使えなかった。 2023年度は海外渡航を計画しており、助成金の使用が計画に近い形で進むと考えている。
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