2023 Fiscal Year Research-status Report
単粒子X線レーザーイメージングの実現に向けたグラフェン溶液セル
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22K18698
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 明大 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (20781850)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 憲慈 北海道大学, 工学研究院, 助教 (10732985)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | X線自由電子レーザー / 単粒子イメージング / 深掘り反応性イオンエッチング |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、X線自由電子レーザー(XFEL)イメージングの測定スループット向上のため、溶液試料セルの高集積化に注力した。従来型の溶液試料セルでは、およそ14 mm角のデバイスに576のセルが集積している。試料の2次元投影像であれば、1枚の回折パターンから再構成できるため、この集積度で問題ない。しかし、少なくとも数1000枚以上の回折パターンデータセットが必要な3次元イメージングへの展開を考えると、溶液試料セルのデザインの一新が必要であった。これまでは水酸化カリウム(KOH)溶液によるシリコン(Si)の異方性エッチングを利用して、窒化ケイ素(SiN)薄膜が製膜されたSi基板から溶液試料セル用のチップを作製していた(2枚のチップを張り合わせてセル化している)。しかしながら、KOH加工の際にできるテーパー構造が集積度を制限していたため、ボッシュプロセスによってアスペクト比高くSiを加工できる深掘り反応性イオンエッチング装置(DeepRIE)に着目した。溶液試料セル用のSiウエハに最適化した加工条件を探索した結果、従来のおよそ5倍の集積度を達成した。一方で、DeepRIEは、KOH溶液と比較して材料選択性が乏しいため、SiN薄膜の加工も無視できない。その結果、最終的にX線入出射窓となるSiN薄膜の表面粗さが悪化することも確認された。そこで、DeepRIEでSiを全て加工するのではなく、KOH加工と組み合わせたプロセスを考案した。これにより、集積度とSiN膜の優れた表面粗さを両立したチップの作製が可能となった。作製したチップ上に金属ナノ粒子を乾燥させた試料のXFEL測定も実施し、問題なく回折パターンを取得できること、また、高集積化によって測定スループットが向上したことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グラフェンを利用した低バックグラウンド試料ホルダに加え、DeepRIEを利用した試料ホルダの高集積化に関する研究にも進捗があったため。さらに、生体粒子を用いたXFEL実験とそのデータ解析も着実に進めているため。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、2023年度に開発した高集積試料ホルダのセル化に取り組む。さらに最終年度となるので、グラフェンを利用した低バックグラウンド試料ホルダと、DeepRIEを利用した高集積試料ホルダに関して、それぞれ論文化を進める。
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Causes of Carryover |
主に、オープンファシリティ利用料が予定よりも抑制できたため。繰り越した予算は、X線レーザー測定のための旅費に加え、論文掲載費などの成果発表に関連した経費に利用予定である。
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