2023 Fiscal Year Research-status Report
A study on tropical basin interactions based on causality analysis
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22K18727
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
東塚 知己 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (40376538)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 気候変動現象 / 熱帯域 / 因果関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
熱帯域に発生する気候変動現象のメカニズムの理解と予測精度の向上は、気候変動研究の中でも特に重要な課題の1つであり、特に気候変動現象間の相互作用の理解を深めることができれば、熱帯域の気候変動現象、ひいては全球の異常気象の予測精度向上に貢献することが期待される。本年度の研究では、主にインド洋の主要な気候変動現象の1つであるインド洋ダイポールモード現象と太平洋の主要な気候変動現象であるエルニーニョ・南方振動現象の間の相互作用について調べた。まずは、Liang (2014)によって提唱された因果関係の解析手法を適用したが、インド洋ダイポールモード現象からエルニーニョ・南方振動現象への影響のみが確認された。次に、インド洋と太平洋の低緯度域の海面水温偏差と東西風偏差に基づいて構築された線形インバースモデルを用い、海盆間相互作用の強度を段階的に変化させることで、インド洋と太平洋の気候変動現象間の相互作用を調べた。その結果、インド洋ダイポールモード現象は、海盆間相互作用を強化すると振幅が増幅するが、エルニーニョ・南方振動現象は、海盆間相互作用の強度を観測よりも強化しても弱化させても、振幅が増幅することがわかり、複雑な気候変動現象間の相互作用の実態の一部が明らかとなった。また、海盆間相互作用は、気候変動現象の季節性にも影響を与えることが明らかになり、特に、インド洋ダイポールモード現象は、海盆間相互作用の強度を弱化させると、ピークの季節が早まることが明らかとなった。さらに、海盆間相互作用を強化すると、インド洋ダイポールモード現象、エルニーニョ・南方振動現象ともに準2年周期変動が卓越するようになることも明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究を通して、インド洋熱帯域と太平洋熱帯域に発生する気候変動現象間の相互作用について新たな知見を得ることに成功した。特に、海盆間相互作用の強度を段階的に変化させる手法は、本研究で初めて考案した手法であり、今後の海盆間相互作用の研究にも広く応用されることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
太平洋のエルニーニョ・南方振動に代表される熱帯域の気候変動現象は、日本を含む世界各地に異常気象を引き起こすことが知られている。したがって、熱帯域の気候変動現象の予測精度の向上は、その影響を軽減するためにも重要な課題であるので、次年度の研究では、海盆間相互作用が、予測可能性に焦点を当てた研究も進めていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
次年度に海盆間相互作用の専門家が多く集まる重要な国際会議が開催されることが、年度途中に判明し、その国際会議で研究成果を発表した方が良いと考えたため。
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