2022 Fiscal Year Research-status Report
Listening faint noise of magma movement in silent nights
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22K18728
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
市原 美恵 東京大学, 地震研究所, 准教授 (00376625)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
行竹 洋平 東京大学, 地震研究所, 准教授 (20435853)
松本 聡 九州大学, 理学研究院, 教授 (40221593)
栗原 亮 神奈川県温泉地学研究所, 研究課, 技師 (50880837)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 火山噴火予測 / 微動 / 背景地震ノイズ / 火山観測 / 火山 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究が対象とする火山性微動は,夜間の静寂時に背景ノイズレベルとして検出できる微弱なものである.この微動をSeismic Background Level (SBL)微動と呼ぶ. SBL微動が発見された霧島火山について,既存データの解析を進めた。SBL微動の振幅変化とスペクトル構造の変化,観測点間の振幅比を用いた位置の推定,多項目観測データとの比較を行い,結果を論文として発表した.また,火山性地震カタログをもとに教師データを作成し,機会学習により霧島浅部域での火山性地震の検出及び震源決定を実施した.同火山の地震観測網により取得された過去13年間の連続波形記録に適用し,その結果,手動検測により得られた既存の震源カタログに対して,約7倍の数の地震が検出された.また,2011年噴火前と2018年噴火前のSBL微動変化と多項目観測データを比較,整理した結果,火山の表面活動や地下数十kmの深部低周波地震活動,SBL微動の周波数構造などにおいて違いのあることが分かった.SBL微動は,マグマ性の流体供給の増加による熱水系内の振動であると考えているが,深部から地表にかけての流体の移動経路が二つの噴火で異なっていた可能性がある. 今後のSBL微動解析を進めるためのデータ整理と予備的な解析にも着手した.霧島火山において九州大学が運用している稠密地震アレイ観測点の2018年のデータや,箱根火山において神奈川県温泉地学研究所が設置している各地震計のデータを,解析可能な形式に変換する作業を行った.また,それぞれのデータについて基礎的な振幅解析やノイズレベルの解析を行った.特に,新たに着手した箱根において,大涌谷など周囲に観光施設がある観測点で日中と夜間でノイズレベルが大きく変わること,丹沢山地の観測点では降雨のあとに河川の水流におけるノイズレベルが大きくなる特徴があることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
データ解析については,当初の予定よりも大きな進展があった.主な研究対象である霧島火山については,SBL微動とその他の地震活動の関係を調べる予定であったが,SBL微動,火山性微動活動,深部低周波地震活動のそれぞれについて顕著な進展があり,論文を仕上げた(うち一つは査読中).さらに,それらの間の関係を噴火活動推移と共にまとめた論文も査読中である.予定していた臨時集中観測には着手できていないが,長期間運用している地震計アレイを引き続き運用し,今後の解析のためのデータを取得した.他の火山での解析の準備や海外の火山へ適用するための交渉も予定通り進められている.
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Strategy for Future Research Activity |
主な研究対象である霧島火山については,2018年から地震計アレイのデータを加えて,2011年噴火後のSBL微動の推移や,2018年の新燃岳噴火から硫黄山噴火への推移を明らかにする.また,噴火前の前駆的なSBL微動の振幅増加とは特徴の異なるものが,2013-2015年にかけて観測されており,また,近年もSBL微動振幅増加が見られる.これらの,非噴火時のSBL微動の実体について解析を進める.その他の火山については,箱根火山,浅間火山,ニュージーランドのホワイトアイランド火山について,SBL微動の有無や噴火活動との対応について検討していく.
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Causes of Carryover |
当初の計画では,2022年度中に本研究が対象とする地震ノイズの原因を明らかにするための観測を強化する予定であった.しかし,すでに取得しているデータを解析しなおしたところ新たな発見があり,それらを論文にまとめることに注力することとした.その結果,3本の論文が国際誌に掲載され,さらに,3本の投稿済み論文が査読中である.今後は,運用を続けている臨時観測のデータの解析を進め,観測計画を検討・実施する予定である。また,他の火山で同様の現象が見られるかどうかの解析も進めていく.
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Research Products
(5 results)