2022 Fiscal Year Research-status Report
有機系ナノコンポジット材料におけるバリスティック伝導の発現と制御
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22K18791
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
鵜沼 毅也 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (20456693)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 光物性 / 有機半導体 / 複合材料 / テラヘルツ/赤外材料・素子 |
Outline of Annual Research Achievements |
内的輸送経路を持つ共役ポリマーを透明なフレキシブル母体材料に配合し,ナノコンポジット膜を作製した。共役ポリマー単体膜の場合,キャリアを生成するために中心波長400nm付近の(価電子バンドから伝導バンドへの励起に対応する)超短光パルスを集光して照射すると,膜の表面付近で強い吸収が起こり劣化してしまうという問題がある。本研究では,共役ポリマーの配合濃度を調節することにより,超短光パルスの照射に対して表面が劣化しないナノコンポジット膜を作製することに成功した。今後,超短光パルスのパワーをすべて吸収させキャリアの生成効率を高めるように,配合濃度と膜厚の最適化を進めていく。 さらに,1000Vまでの高電圧を印加した状態でナノコンポジット膜における共役ポリマー内部にキャリアを生成し,バリスティック伝導を反映したテラヘルツ放射波形を測定することができるような,分光測定装置を作製した。時間幅約100fs(10の-13乗秒)で中心波長800nm付近の超短光パルスを,非線形光学結晶によって中心波長400nm付近に変換し,ナノコンポジット膜へ照射するようにした。生成されたキャリアは,高電圧によってピコ秒(10の-12乗秒)あるいはそれ未満の非常に短い時間スケールでバリスティックに加速され,マクスウェル電磁気学にしたがってテラヘルツ放射を起こすと期待される。この分光測定装置を来年度から本格的に稼働させるべく,中心波長変換後のパワーや参照試料のテラヘルツ信号強度・周波数範囲を確認しながら,最適化を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有機系ナノコンポジット膜の試作とテラヘルツ放射分光測定装置の組み立てを行い,輸送経路を劣化させずにバンド間励起で効率良くキャリアを生成する目途が立ち,バリスティック伝導を発現させるための準備が予定通りに進んだ。したがって,本研究は次年度の計画へスムーズにつながる状態にあり,目的の達成に向けて順調に進展していると評価される。
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Strategy for Future Research Activity |
ナノコンポジット膜試料と分光測定装置に関する基本的な点の最適化を終えた後,テラヘルツ放射分光を本格的に開始する。その結果を試料作製の段階にフィードバックしながら,バリスティック伝導の発現に必要となる要素を検証していく。すでに検討している試料作製上の新しい物質やアイデアについても,適切なタイミングで実験に採り入れて有効性を調べていく。
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