2023 Fiscal Year Research-status Report
Direct cracking of hydrocarbon fuel by hot electron injection using graphene planar type electron source and its application for hydrogen production
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22K18800
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
村上 勝久 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (20403123)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | グラフェン / 六方晶窒化ホウ素 / 電子放出 / 水素発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は原子層堆積装置を用いて成膜したアルミナのグラフェン電子源用酸素耐性保護膜としての特性評価を行った。アルミナ保護膜成膜条件を最適化することで、アルミナ膜厚3nmで酸素プラズマ耐性のあるアルミナ保護膜を成膜することに成功した。保護膜付きのグラフェン電子源の電子放出特性を評価し、電子放出効率0.47%、放出電流密度1mA/cm2を達成し、実用レベルの電子放出効率と放出電流密度を達成した。さらに放出電子のエネルギー分析から、放出電子はグラフェンの仕事関数より高いエネルギーを保っており、保護膜中での電子のエネルギー損失は少なく、保護膜による電子放出効率の低下は保護膜での弾性散乱が要因であることを明らかにし、更なる保護膜層の膜厚薄膜化により電子放出特性の向上が可能であることが分かった。 液中電子線照射装置の開発については、今年度新たに真空隔壁プロセスを開発し、電子透過窓の有効面積を昨年度から24倍に拡大し、液中への電子線注入量を昨年度の80nAから1.3uAまで向上することに成功した。更に、エタノール中への電子線の安定注入を実現し、エタノールへの電子線注入により水素が発生することを明らかにした。その際に二酸化炭素等の炭素を含む副生ガスは発生しておらず、炭化水素燃料であるエタノールから二酸化炭素排出フリーで水素を発生できることを実証した。水素発生量の定量分析から水素発生効率を試算すると、1電子あたり複数個の水素分子が発生していることが分かり、電子線注入による水素発生は、従来の電気化学反応とは異なるメカニズムである可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グラフェン電子源のエタノール中での安定動作のために、酸素耐性と放出電流密度を両立可能なアルミナ保護膜の成膜プロセスを確立した。さらに液中電子線注入装置によるエタノール中への電子線注入により二酸化炭素排出フリーで水素を発生可能であることを明らかにし、研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、電子線注入により炭化水素燃料を分解し二酸化炭素排出フリーで水素発生が可能であることを明らかにした。また、エタノール中でのグラフェン電子源の安定動作の課題であった、デバイスの酸素耐性を高める保護膜も開発できた。来年度は、保護膜付きグラフェン電子源によるエタノール分解水素発生について調査する。
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Causes of Carryover |
本年度予定していた液中電子線照射装置の改造費用が想定よりもかからなかった。節約できた費用と次年度分の費用を合わせることで、液中電子線照射装置へのグラフェン電子源搭載用治具を作製し、本研究の最終目標であるグラフェン電子源を用いたホットエレクロトン注入による炭化水素燃料分解水素発生実験を行う。
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