2022 Fiscal Year Research-status Report
構造物の耐久性を飛躍的に向上させる新材料を用いたプレストレス導入法の開発
Project/Area Number |
22K18819
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
藤倉 修一 宇都宮大学, 地域デザイン科学部, 教授 (90782558)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大森 俊洋 東北大学, 工学研究科, 教授 (60451530)
荒木 慶一 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (50324653)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | プレストレス / 形状記憶合金 / マルテンサイト変態 / ヒステリシス / コンクリート部材 |
Outline of Annual Research Achievements |
土木構造物におけるプレストレス導入を可能にする形状記憶合金の開発研究を行った.変態温度ヒステリシスが広い形状記憶合金としてCu-Al-Mn系合金に着目した.200℃付近の温度域で時効処理を施すことでベイナイト変態が生じることがわかっているため,これを利用することで,変態温度ヒステリシスを拡大することが可能と考えられる. そこで,Cu-Al-Mn及びCu-Al-Mn-Ni合金を作製して200℃時効を行い,時効時間とマルテンサイト変態温度の関係を調査した.時効処理によりベイナイト変態が生じることでマルテンサイト変態温度が低下し,変態ヒステリシスが増大することが確認できた.これらの実験結果を解析することでベイナイト変態の活性化エネルギーを算出することができ,温度と時間をパラメータとした時効条件の推定ができるようになった. さらに,ベイナイト変態させたCu-Al-Mn合金単結晶を作製し,様々な応力下での変態挙動を調査した.印加応力が低い場合,複数のマルテンサイトバリアントが生成して大きな可逆歪は得られなかったが,比較的高い応力下では,最大で6.4%の大きな回復歪が得られた.また,印加応力が高いほど変態温度ヒステリシスが増大する傾向が見られた.時効時間が長くなりベイナイト変態が過度に進行すると,変態温度ヒステリシスは増大するが形状回復歪は低下した.以上より,Cu-Al-Mn合金において適切な時効時間で生成するベイナイト変態を利用することで,プレストレス導入に有効な,ヒステリシスの広い形状記憶合金が開発できる可能性を見出すことができた. 開発した形状記憶合金をコンクリート部材中に用いて,プレストレス導入効果を検証するための,実験方法に関する検討を行った.形状記憶合金を丸棒形状に加工し,定着工法については,丸棒両端部を転造ねじ加工し,ナットによって定着版を端部に取り付けることとした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,Cu-Al-Mn合金に着目し,適切な条件で材料を作製することでヒステリシスを広げることができた.実験により適切な時効条件を見出すことができたことは大きな成果と言え,予定通り進捗している.また,コンクリート部材中の合金によるプレストレス導入効果を検証するための構造特性評価については,評価実験の準備を行い,来年度に向けて予定通りに進捗している.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,合金組成と熱処理条件の最適化を図り,一定応力下での温度と歪の変化を調査する実験を行った.翌年度は,選定した試料を用いて,より実用的な評価である歪一定下で加熱・冷却を行った時の応力応答を調査する予定である.さらに,コンクリート部材中の合金によるプレストレス導入効果を検証するために,コンクリートに合金を埋め込んだ要素試験体の合金に熱を加え,プレストレス応力を評価する.
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Causes of Carryover |
今年度は,要素実験の計画を立てたため,実験の一部を来年度に行うため.
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