2023 Fiscal Year Annual Research Report
薄膜成長プロセス制御による複合酸化物薄膜の強磁性化
Project/Area Number |
22K18903
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
白土 優 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (70379121)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | 磁性材料 / 薄膜 / 成長プロセス / エピタキシャル成長 / 複合酸化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
強磁性材料(磁石)は自発磁化を示す材料の一つであり、そのほとんどは、Fe、Coを主成分としている。これは、単元素で自発磁化を示す材料がFe、Co、Niに限られるためである。また、自然界に存在する多くの材料は酸化物であり、磁性(磁気的性質)の観点では、磁石にならない反強磁性と呼ばれる性質を示す。言い換えると、もし酸化物の反強磁性を制御し、強磁性化(磁石化)することができれば、磁性材料の元素戦略・材料選択性を飛躍的に向上させることが可能になり、磁性材料設計の大きな転換点となる可能性を秘める。本研究では、自発磁化を示さないCr2O3に対して、Crの特定のサイトに非磁性元素であるAlを添加した複合酸化物において、自発磁化の生成を試みた。本複合酸化物は、平衡相では自発磁化を示さないため、本研究では、薄膜成長再表面での元素ごとのサイト選択性を利用する、薄膜成長プロセス制御に基づく手法で、本コンセプトの実証を図った。2022年度に、Cr2O3(0001)薄膜に対して成長過程でAlを添加することで自発磁化が生成することを見出しており、2024年度は、この成果を基に自発磁化生成のメカニズムを微視的に明らかにすることを目指した。具体的には、薄膜成長プロセス制御のために、薄膜の結晶性と自発磁化生成の関係、微細構造との相関、エピタキシャル成長を駆使して結晶成長方位を変更した場合の自発磁化生成の有無、微細構造の直接観察を行い、自発磁化の生成は、非磁性元素が磁気副格子を選択的に置換することで生成していることを明らかにした。また、添加する元素を変更した際に、同様のメカニズムが生じるかについても検討し、上記で明らかにした磁気副格子選択置換が生じる指針として、成長させる酸化物の最安定表面構造と密接に関連する可能性を示唆した。
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