2022 Fiscal Year Research-status Report
気液二相流により分子集合ダイナミクスを制御する脂質ナノ粒子の革新的製造プロセス
Project/Area Number |
22K18923
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
吉本 誠 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (80322246)
|
Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
|
Keywords | 脂質ナノ粒子 / 酵素 / カチオン性脂質 / マイクロ流路 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は,酵素を内包させた脂質粒子の調製に関して,下記の検討を行った。 (1)脂質を溶解させたエタノールと酵素を溶解させた緩衝液の混合による脂質粒子の調製:カチオン性脂質や双性脂質等の混合脂質を溶解させたエタノールと等電点が比較的低く,中性付近で負に帯電する多量体酵素を溶解させた緩衝液を一定比率でフラスコ内において混合して,脂質粒子を生成させた。混合液の白濁化や粒子径の測定から,粒子の生成を確認できた。また,遊離酵素の分離方法について,ゲルろ過法や透析法の各適用性を詳細に検討した。 (2)マイクロ流路を用いた酵素含有脂質粒子の調製:フラスコを用いた手動による混合方法に比べて,エタノールと水溶液の混合過程を制御しやすいと考えられる,マイクロ流路を用いる脂質粒子調製法を検討した。2液を導入する際の体積流量比や脂質濃度等の各影響および粒子の精製方法について検討して,フラスコを用いた調製方法との相違点を明らかにした。 (3)酵素含有脂質粒子の生成に及ぼす酵素特性の影響:上述の検討過程において,酵素を含有させた脂質粒子から遊離酵素を分離する過程の制御が重要な課題であることが明らかとなった。そこで,分子量や等電点が異なる酵素の共存下において脂質粒子の調製を行った。脂質粒子内の酵素が発現する活性についても検討を行った。 以上より,酵素を含有させた脂質粒子は,その調製・精製過程や酵素の含有効率等の点において,従来のリポソーム系に比べて異なる特徴があることを明らかにするとともに,今後,気液二相流系等を利用する脂質粒子の調製にあたり,重要な知見が得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酵素を含有させた脂質ナノ粒子の調製と精製,特性の解析に関する知見を蓄積するとともに,課題を明らかにすることができた。特に,酵素含有脂質粒子と遊離酵素の分離過程の制御が重要であることを示した。また,酵素含有脂質粒子が従来の酵素含有リポソームに比べて,酵素含有量や酵素活性において異なる特徴をもつこと等,今後の検討において重要な知見が得られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和4年度に得られた,酵素を含有させた脂質粒子の調製に関する知見に基づいて,下記の点を検討する。検討項目(1)は令和5年度に実施する。(2)は,(1)と並行して,令和5年から検討を開始する。 (1)酵素を含有させた脂質粒子について,酵素活性や酵素の立体構造,酵素の局在位置等を明らかにする。分光学的手法や粒子径測定,界面活性剤により脂質粒子を溶解させた場合の酵素活性等,酵素含有脂質粒子の性質を種々の観点から評価する。 (2)脂質含有エタノール溶液と酵素含有緩衝液の混合方法について,種々の条件を検討する。具体的には,2液を混合する際のマイクロ流路の形状を変化させて,得られる脂質粒子の特性との関係を明らかにする。また,カチオン性脂質のみでなく,イオン化脂質の効果も詳細に検討する。さらに,2液混合過程において,気液二相流を利用する場合に生成する脂質粒子の特性や粒子内の酵素活性を解明する。気液二相流を発生させる装置は,外部循環式エアリフト型気泡塔を利用する。気液二相流を構成する気泡群の性質や液流速等の影響を検討するために,気泡塔を基盤として,新たな気液二相流発生装置を設計開発する。
|
Causes of Carryover |
令和4年12月に,脂質ナノ粒子に内包させる酵素(βガラクトシダーゼ)が必要になり,大学に発注を依頼した。その後,メーカーにおいて欠品中であったが,令和5年4月に納入され,研究に使用している。このため,βガラクトシダーゼの購入のための経費(26,938円)については,令和4年度中の予算執行が行われなかった。この間,性質に類似点がある乳酸脱水素酵素等を用いることにより,研究の進展に支障はなかったが,今後,βガラクトシダーゼを用いた場合の知見を蓄積して,酵素内包脂質ナノ粒子の調製法の開発を進める。
|