2022 Fiscal Year Research-status Report
自然摂動軌道による直観性と定量性を両立した化学反応解析法の構築と応用
Project/Area Number |
22K19010
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
波田 雅彦 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (20228480)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 自然摂動軌道 / NMR / 分子物性の解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
電子状態計算法において、信頼性の高い定量的な計算値を得る事と同時に、その計算精度に応じた解析方法が提供されねばならない。本申請では、自然摂動軌道を利用して、直観性と定量性を両立した分子物性の解析方法、及び、化学反応解析法を構築し、その方法を種々の分子や反応系に応用する。自然摂動軌道は申請者が提案して名付けたものであり、その要点は外場に応答する波動関数の成分を抽出することにある。このため、外場(微小変化)を与える必要がある。純粋な「外場」である外部電場や磁場を使えば、分子分極率やNMR化学シフトなどの各種の解析に使える。更に、本提案では、(a)固有反応座標(IRC)の基準振動に沿った分子骨格の変化、(b)2つの反応物間の相互作用、なども外場として有効である。(b)の場合は、化学反応の特徴を少数の軌道のペアーで直感的かつ定量的に解釈することを目論んでいる。 初年度は、NMR化学シフトの解析への応用を考えた。NMR計算には、W化合物(WCl6(2-), WO4(2-), WF6(2-), W(CO)6(2-), WCp2H2)、Pt化合物(PtCl4(2-) , PtBr4(2-) , PtI4(2-) , Pt(OH2)4(2+) , Pt(SCN)4(2-))、Hg化合物(HgCl2, HgBr2, HgI2,HgMe2,Hg(CCl3)2 , Hg(SiMe3)2)の重原子核NMRを対象として、従来のNPOやMulliken Populationの解析、及び、励起エネルギーと対応付ける解析などの限界を確認した。 具体的には、HgやPt化合物では価電子d軌道がほぼ全て占有されている為、p軌道の電子populationの解析が有効であった。一方、W化合物ではd軌道は概ね半分程度占有しているためpopulationの解析は有効でなく、d-d遷移の解析が有効であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍によって前年度で終了予定であった萌芽的研究が1年遅れとなり、その研究を進展させるために本研究は若干遅れることになった。特に、学会参加や出張が無かったため予算執行の点で遅れが大きくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の理由の為に若干の遅れはあるが、研究自体は初年度の予定の1/2程度は進展させているので、2年度に初年度分の遅れも含めて進展させたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により前回の萌芽的研究が遅れており、今年度は主としてそれを進展させた為に、本研究助成金に掛かる学会発表や出張、更に備品購入や論文執筆関係の為の支出が遅れた。研究そのものは若干の遅れがあるものの進展している。
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