2022 Fiscal Year Research-status Report
Depolymerization of Silicone to cyclic origo-siloxane by metal complex catalysts
Project/Area Number |
22K19050
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
水田 勉 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 教授 (70221603)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | ポリシロキサン / 環状オリゴシロキサン / 解重合 / 金属錯体触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
シリコーン(SiR2O)nは,主鎖がSi-O結合である無機高分子である。シリコーンは、熱的に安定で、化学安定性に優れ、低毒性、耐光性、絶縁性など多くの優れた特性を持つ。世界で約300万トン近く生産されているが、使用後のシリコーンは、埋め立て処分もしくは焼却処理されており、莫大なエネルギーを費やして合成されるにもかかわらず、再利用されていない。 本研究ではシリコーンの再利用の手法を開発するため、ポリマーを環状オリゴマーに変換する触媒反応(解重合反応)の開発を行う。シリコーンとして代表的な(SiMe2O)nは、極性の酸素基を内側にしたコイル型構造をとる。Si上の2つの酸素を金属にキレート配位させられるような金属錯体を使うことにより、コイルの末端Me2SiO-基の攻撃による環化反応を促進させ、環状オリゴマー(SiMe2O)n(n<10)を得ることを実現する。 環化反応を促進する錯体触媒としてPdの2核錯体が有効であることを見出した。この2核錯体は、Pdに配位したリン配位子が、かさ高いPh基を有しているため、Pd周りを壁で囲ったような立体環境を有している。また、Pd上に正電荷をもっておりLewis酸性を有している。この立体環境と電子的な性質により、シリコーンの主鎖の酸素に配位したとき、Oの供与によりSiの求電子性が高まるとともに、Pd周りの壁によって末端部分が環状に折り曲げられ、環化反応が完結すると考えられる。実際に錯体を触媒として、シリコーングリースおよびシリコンオイルなどの高分子量の直鎖シリコーンが、(SiMe2O)n (n=4-6)の環状オリゴマーとして得られる。最も収率の高いものはn=4であり、現段階では47%程度得られた。 新たなPd2核錯体の補助配位子として、P-P結合を強固なナフタレンで連結したものを合成した。今後、錯体合成に供する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
触媒効率の改善:現在見出している反応条件では、触媒10mol%, 70℃48時間でn=4を47%の収率で生成物を得ている。反応時間と収率共に、より高効率にする必要があることと、ルイス酸触媒としての機能は他の触媒でも達成可能と考えられることから、11族のCuを中心に触媒種の探索を行った。残念ながら、活性は大幅に下がり、触媒として有用な新たな金属を見出すに至っていない。 Pdの他にPtについても検討した結果Pt(0)(dppm)3錯体を使っても解重合反応は進行することが分かった。この白金錯体は、反応溶液中で変換されPt2(mu-PPh2)(dppm)(Ph2PMe)2+へ変化されることが分かった。この構造を基に、Pd体についても等構造体を、別途合成法で調整し、触媒として解重合反応に供すると、上記の成果を得るに至った。反応にはPd2(mu-PPh2)(dppm)骨格が重要と考えられたため、それ以外の単座配位子について、スクリーニングを行った結果反応性は、PPh2Me > PPh3 > PEt3 >ノルボルネンとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
反応機構の詳細 上記の配位子のスクリーニングに加えて、理論計算により作業仮説であるシロキサン末端の環化による環状オリゴマー生成機構を検証する。ここから得た知見を基に、触媒の改良の方向性を導き出し、より高活性な触媒の開発へつなげる。現在までに行った予備的なモデル計算では、シロキサン酸素のPdへの配位に加えて、Si上のMe基とPh基とのCH-π相互作用が多数の箇所で生じており、錯体触媒が基質を取り込む際に安定化への寄与が大きいことがうかがえる。より高度な計算手法を今後進めていく。 実効的な解重合反応の構築 現在得られている結果では、触媒の熱的安定性は高く数日加熱を続けても生き残っている。この解重合反応は、最終的に平衡混合物となることを示しているので、分子量の最も小さいn=4を蒸留により系から取り除くことができれば、n=4は平衡により再び生じるので、実質的な収率と選択性の向上を図ることができる。また、ポリマーを追加投入することにより、連続的な解重合反応の実施にも取り組む。
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Research Products
(3 results)