2022 Fiscal Year Research-status Report
カーバイド配位子を有する鉄硫黄クラスターの合成と性質の解明
Project/Area Number |
22K19054
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
竹本 真 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (20347511)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | カーバイド / 鉄硫黄クラスター / ニトロゲナーゼ / 窒素固定 |
Outline of Annual Research Achievements |
窒素固定酵素ニトロゲナーゼは、大気中の窒素分子を常温常圧で還元し、生命に必須のアンモニアを生成する金属酵素である。その活性部位には、炭素原子(カーバイド)を共有頂点とするダブルキュバン型鉄硫黄クラスターが存在する。このユニークな構造と機能を持つ活性部位の形成過程と作用機構を分子レベルで理解することにより、触媒科学の発展につながる多くの有用な知見を獲得できるものと期待される。本研究では、ニトロゲナーゼ活性部位のモデルとなる鉄硫黄カーバイドクラスターを合成し、それらの生成機構および窒素固定に関連した反応性を解明することを目的とする。
本年度は種々のキュバン型Fe4S4クラスターとカーバイド配位子となる炭素源との反応を精査した。ニトロゲナーゼ活性部位の形成においてS-アデノシルメチオニンから2分子のFe4S4 クラスターの会合体へのメチル基が転移すると考えられている。これをふまえ、出発物質となる Fe4S4 クラスターを合成し、その溶解性、安定性などの基本的な情報を確認した。これらの知見をもとに次年度には、2分子のFe4S4 クラスターの連結によるダブルキュバン構造の構築を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度に実施した詳細な検討により出発物質として適したFe4S4クラスターの候補を見出し、次に計画しているメチル基転移反応の検討に入る準備が整ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
ニトロゲナーゼ活性部位に含まれる中心炭素(カーバイド)はS-アデノシルメチオニン(SAM)のメチル基に由来することが知られている。昨年度までの研究により、SAMのモデルとなるメチルスルホニウム化合物を開発した。今後の研究では、このSAMモデルと2分子のFe4S4 クラスターの会合体との反応を検討し、C1配位子(CH3, CH2, CH, C)を導入したダブルキュバン型鉄硫黄クラスターを合成する。
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Causes of Carryover |
本年度に予定していた極低温装置の購入を取りやめた。本装置は、熱的に不安定な錯体の合成を効率化するために購入を予定していたが、本研究で対象とする鉄硫黄クラスターが想定よりも熱的に安定であることが研究の過程でわかってきた。そのため、本装置を導入する費用対効果が小さくなったと判断した。
現在、錯体の合成実験を効率化するための反応容器および錯体の同定を効率化するための UV-Vis 分光光度計の購入を計画している。
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