2022 Fiscal Year Research-status Report
標的指向型ファージ提示法とナノ粒子技術の融合による次世代ペプチド医薬品開発
Project/Area Number |
22K19102
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
三原 久和 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (30183966)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | ペプチド / リガンド / ファージ提示法 / ナノ粒子 / クラスター効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
ガンを含むさまざまな疾患の治療に抗体が広く利用されている。抗体医薬品は標的生体分子のみに特異的かつ高い結合活性で作用するため、低分子医薬品と比較して副作用が少ない。しかし、高い製造コストや厳密な品質管理が必要であるため、安価に製造可能かつ品質管理が容易な抗体代替医薬品の開発が課題となっている。本研究では、申請者が独自に開発した標的指向型ファージ提示法によるペプチドリガンド探索と、クラスター効果を利用してリガンドの結合活性を飛躍的に向上させるナノ粒子技術を融合させることにより、ナノ粒子型ペプチド医薬品を開発することを目的とした。 今年度は、ガラクトース結合性レクチンの1つで、ガン関連タンパク質であるガレクチン3を標的として、ペプチドリガンド探索を実施した。ガラクトース誘導体を化学合成し、ファージ上に提示したペプチドライブラリに選択的に化学修飾することにより、ガラクトース修飾環状ペプチドファージライブラリを構築した。ガレクチン3を大腸菌発現系を用いて発現・精製し、ビオチン化した後、ストレプトアビジン磁気ビーズ上に固定し、スクリーニングに用いた。スクリーニング条件をさまざまに検討し最適化した後、バイオパニングによるスクリーニングを実施した結果、ガレクチン3に結合するペプチドを提示したファージの濃縮が確認できた。ファージをクローニングし、DNA配列解析を行った結果、特定のペプチド配列の同定に成功した。また、ファージELISAを行った結果、同定したペプチド配列の1つがガレクチン3に対して高い結合活性を示すことを明らかにした。さらに、蛍光シリカナノ粒子の調製法も種々検討を行い、次年度の糖ペプチド修飾蛍光シリカナノ粒子の創製の基盤を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
和4年度は、ガレクチン3に特異的に結合する糖ペプチド阻害剤の探索と蛍光シリカナノ粒子の調製を計画していた。ガラクトース誘導体の合成およびガラクトース修飾環状ペプチドファージライブラリの調製は問題なく進行させることができた。また、大腸菌発現系を利用してガレクチン3を発現・精製し、ビオチン化してストレプトアビジン磁気ビーズ上に固定化することもできた。そこで、ガレクチン3固定化磁気ビーズに対してガラクトース修飾環状ペプチドファージライブラリを相互作用させ、スクリーニングを実施した。ファージをクローニングした後、DNA配列解析を実施しペプチド配列の同定を試みたが、ガレクチン3に特異的に結合する配列の獲得ができなかった。原因を詳細に検討した結果、市販のストレプトアビジン磁気ビーズに問題があることがわかった。そのため、ストレプトアビジン磁気ビーズの入手先を変更し、バイオパニングの条件を検討し最適化を行った。その結果、DNA配列解析後に特定のペプチド配列への濃縮を確認することができた。ペプチド配列を同定したファージクローンを用いてELISA実験を行った結果、同定したペプチド配列の1つがガレクチン3に対して高い結合活性を示すことがわかった。蛍光シリカナノ粒子の調製法も種々検討を行い、次年度の糖ペプチド修飾蛍光シリカナノ粒子の創製の基盤を確立した。 バイオパニングに用いる市販のストレプトアビジン磁気ビーズに問題があったが、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
「ガレクチン3に特異的に結合する糖ペプチド阻害剤の探索」を引き続き実施する。ガレクチン3に対して結合活性を示す糖ペプチドを提示したファージの同定まで完了しており、令和5年度は、ガラクトース修飾環状ペプチドを化学合成し、ガレクチン3との相互作用を詳細に解析し、結合・阻害活性を評価する。ガレクチン3以外のガレクチンアイソフォームとの相互作用も解析し、ガレクチン3に対して特異的な糖ペプチド阻害剤を絞り込む。その後、蛍光シリカナノ粒子を調製し、ナノ粒子上に糖ペプチド阻害剤を修飾することにより、研究計画を完遂する。 令和5年度に計画している「糖ペプチド阻害剤を集積した蛍光シリカナノ粒子の機能評価」を実施する。蛍光標識したガレクチン3を調製し、糖ペプチド修飾蛍光シリカナノ粒子との結合親和性を解析することによりクラスター効果の発現について検証する。その後、本糖ペプチド修飾蛍光シリカナノ粒子を用いて、細胞中のガレクチン3の蛍光イメージングを実施する。ガレクチン3の発現が亢進している乳ガン細胞(MCF7)を用いる。比較として、肺ガン細胞(A549)、肝ガン細胞(HepG2)あるいは正常組織由来の細胞HEK293を用いてコントロール実験も実施する。
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Causes of Carryover |
研究経費は当初の予定通り、物品費、旅費、共通機器利用料等に使用した。次年度も、研究計画に従って試薬や器具等の物品費及び旅費、共通機器利用料等の経費として使用する。
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