2022 Fiscal Year Research-status Report
Toward engineered biosynthesis of drugs in human cells
Project/Area Number |
22K19158
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
渡辺 賢二 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (50360938)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | fumagillin / 遺伝子治療 / 天然物 / 生合成 / 生合成遺伝子異種発現 / 抗がん剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
Aspergillus fumigatusが産生するfumagillin (1)はmethionine aminopeptidase 2(MetAP2)を選択的に阻害することで血管内皮細胞の増殖を阻害する極めて強力な血管新生阻害剤である。1の生合成酵素の一つであるFma-P450は、同エポキシ環の形成を担う酸化酵素であり、多段階の酸化反応を経てβ-trans-bergamotene (2)をdehydro-demethoxyfumagillol (3)へと変換する。さらに3は還元酵素であるFma-KRによってdemethoxyfumagillol (4)へ変換されるが、fma-TC及びfma-P450を異種発現させたSaccharomyces cerevisiaeでは、3は宿主の内在性還元酵素によって5-epi-demethoxyfumagillol (5)へ変換される。また、4はA. fumigatus A1159のfma-C6H欠損株から単離した6-demethoxyfumagillin(6)をNaOHで加水分解することも単離することが可能である。Cell counting WST-8を用いた細胞毒性試験では、4で48時間処理したヒト子宮頸がん細胞HeLaでは増殖抑制効果が認められた。また、2はHeLa細胞に対して毒性はなく、それに対し5は濃度依存的にHeLa細胞の増殖を抑制した。すなわち、Fma-P450は無毒の化合物2を細胞増殖抑制効果を有するfumagillol前駆体へと変換するための重要な酵素である。加えて我々の研究グループは世界に先駆けてFumagillinの生合成機構を解明し、fumagillin関連の遺伝子や標品など研究室保有のツールが充実していたこともあり、我々はヒトの細胞に導入する天然物生合成遺伝子をfma-P450とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
LC-MS分析の結果、HeLa + fma-P450細胞培養液から検出された化合物C15H24O3の保持時間は、4とは異なり、5と一致した。また、A. nidulansにfma-TCおよびfma-P450を共発現させることでfarnesyl diphosphate (9)を原料とし3が生合成されるが、その培養液中からは5も同時に検出されるため、異種発現により生合成された3はS. cerevisiaeに限らずいずれの宿主においても容易に還元され、5へ変換されることが示された。次に、上述の手順で得たHeLa細胞培養液抽出物から5を単離・精製し、NMR分析を行った。シリカゲルクロマトグラフィーおよび2度のHPLCにより5を含む粗精製画分Bを得たが、その収量は0.1 mg以下であり、1H NMRによる分析は極めて困難であった。しかしながら、同精製物から5の1α、1β、9位のエポキシ基に由来するδH 2.88 ppm、2.56、2.66 ppmの特徴的なシグナルを検出することができた。さらに、5の13、15位のメチル基に由来するδH 1.74、1.17 ppmのシグナルも検出された。これらの結果から、HeLa細胞内で発現したFma-P450は、多段階の酸化反応と還元をへて2を5へ変換できることが明らかとなったため。
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Strategy for Future Research Activity |
HeLa細胞自身が生合成した5が、抗がん活性を示すか検証した。まず、HeLa + fma-P450細胞に100 μM 2を添加し、12時間後の細胞の様子を観察した。強力な細胞死誘導活性を有するdoxorubicinを添加した場合では、HeLa細胞の形態は球形に変化しディッシュから剥離する様子が観察されたが、2を添加してもHeLa + fma-P450細胞の形態に変化は認められなかった。また、細胞死により細胞外へ放出される乳酸デヒドロゲナーゼ (lactate dehydrogenase: LDH)の量に基づいて細胞死を判定するLDH assayでは、doxorubicinは50 - 100μMの濃度でHeLa + fma-P450細胞の細胞死が誘導されたが、2を添加しても細胞死誘導効果は認められなかった。一方で、4及び5は50μM以下ではHeLa細胞に対して増殖抑制効果が極めて弱い。このことから、HeLa + fma-P450細胞で生合成された5が抗がん活性を示さなかったのは、5の生産量が不十分であることが原因として考えられる。そのため、本法を遺伝子治療に応用するためには、抗がん物質への変換効率を如何にして向上させるかが今後の課題となる。例えば、Fma-P450のレドックスパートナーを共発現させることや遺伝子配列のヒトコドン化、遺伝子発現プロモーターの最適化などが5の生合成効率を向上させる方法として有効であると思われる。あるいは、dexorubicinなどのような、より強力な抗がん活性を示す天然物の生合成遺伝子に着目するのも良いだろう。
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Causes of Carryover |
研究上の消耗品であるDNAポリメラーゼの納期が遅れ予算執行が年度末決済に間に合わなかったため。
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Research Products
(3 results)