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2022 Fiscal Year Research-status Report

Understanding the mechanism of pine cone opening and closing motion using novel pretreatment techniques and structural analysis

Research Project

Project/Area Number 22K19203
Research InstitutionTokyo University of Agriculture and Technology

Principal Investigator

堀川 祥生  東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (90637711)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 四方 俊幸  東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10178858)
Project Period (FY) 2022-06-30 – 2024-03-31
Keywordsセルロース / マトリックス成分 / 階層構造 / 水 / 赤外分光分析
Outline of Annual Research Achievements

マツ科マツ属の球果である「松かさ」は種子を遠方へと散布する生存戦略のため湿度に応じて開閉する。松かさ鱗片の基部は2層構造を形成しており、一方は湿度に応じて不変であるが、他方は湿度に応じて伸縮する。後者は独特な配向をしたセルロースが細胞壁に堆積することで特異的な機能を発現している。しかし、細胞壁成分はセルロースだけでなく、マトリックス成分もあるが、その役割については未だ解明されていない。また開閉運動へとエネルギーを伝達するセルロース―水の相互作用やその粘弾性についても不明なままである。したがって、本研究では特定の構成成分のみを除去する前処理技術を駆使し、松かさの屈曲機構の解明を目的とする。
2022年度は松かさ鱗片に対し、その階層構造を維持したまま非セルロース成分を除去する化学処理条件の最適化を図った。エチレングリコールを用いたアルコリシスについて検討したところ、効果的にマトリックス成分を除去する条件を見出した。さらに条件に応じて構成成分を制御できることも明らかとなった。加えて、亜塩素酸ソーダ処理を行うことで、形態を維持したままほぼ完全に脱色され非セルロース成分がフリーな鱗片の調製に成功した。次に組織・細胞構造から微細構造に至る階層増構造評価を行った。各種顕微鏡観察およびX線回折測定により、細胞構造からセルロースミクロフィブリルの配向および結晶構造も維持されていることを確認した。以上から、マクロからミクロにまでおよぶ各段階の構造を維持したまま非セルロース成分を選択的に除いた松かさ鱗片の調製に成功した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

実験試料はアカマツ(Pinus densiflora)の松かさを用いた。試料を採取し、その鱗片をナイフで切り出した。鱗片を構成するマトリックス成分の影響を理解するため、セルロースを残したまま、非セルロース成分を除去するため化学処理を施した。耐圧管に試料をセットし、アルコリシスを行った。反応溶媒は硫酸を添加したエチレングリコール、そして処理温度や反応時間について検討した。その結果、処理条件によって色彩が変化し、厳しい条件ほど黒褐色となった。検討の結果、反応温度が150 ℃のアルコリシス試料を用意し、固形残渣を回収して超純水で洗浄した。さらに亜塩素酸ソーダ処理を行ったところ、黒褐色の鱗片が形態を維持したまま徐々に脱色され、最終的には完全に白色となった。
得られた試料を赤外分光分析や構成成分分析で成分評価を実施した結果、ほぼ純粋なセルロース試料であった。鱗片の形態は維持されていたが内部構造については不明なため、X線CTに供したところ、未処理同様に配列した細胞が確認された。屈曲において非常に重要となるセルロースの配向性をX線回折測定により評価した。未処理鱗片の基部において厚壁組織の細胞壁ではセルロースミクロフィブリルが直行配向しているため、十字タイプの二次元回折パターンが得られる。アルコリシスおよび亜塩素酸ソーダ処理した鱗片でも同様のパターンが得られたため、ミクロフィブリルの配向が保持されていることが確認された。さらにセルロースの結晶構造およびミクロフィブリルの形態も大きく変化していなかった。したがって、最適化した前処理によって松かさ鱗片の階層構造を維持しながら非セルロース成分を除去に成功し、屈曲機構の解明に繋がる重要な知見が得られた。

Strategy for Future Research Activity

2023年度は湿度環境に応じた松かさ鱗片の挙動を解析する。水との相互作用について調べるため、未処理および脱マトリックス処理した鱗片について、オーブン乾燥および凍結乾燥を行い、屈曲角を定量的に評価する。また湿度を変化させた場合の屈曲特性に加え、その可逆性についても解析する。
2022年度に実施したアルコリシスに関する成果から、条件を変化させることによって構成成分量が変動する。したがって、マトリックス成分量が異なる鱗片を調製し、いずれの試料においてもマクロからミクロにまでいたる階層構造を評価する。その上で、マトリックス成分量と屈曲特性についての知見を収集する。集積したデータを体系的に解釈し、湿度に応じた松かさにおけるマトリックス成分が果たす役割の解明を目指す。

  • Research Products

    (15 results)

All 2023 2022

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results,  Open Access: 1 results) Presentation (13 results)

  • [Journal Article] Structural diversity of natural cellulose and related applications using delignified wood2022

    • Author(s)
      Horikawa Y.
    • Journal Title

      Journal of Rheology

      Volume: 68 Pages: 683―692

    • DOI

      10.1186/s10086-022-02061-2

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Journal Article] Rigid rod particle like viscoelastic responses of poly(vinylidene fluoride) in N-methylpyrrolidone solution2022

    • Author(s)
      Hozumi H., Nohara Y., Horikawa Y., Shikata T.
    • Journal Title

      Journal of Wood Science

      Volume: 67 Pages: 683―692

    • DOI

      10.1122/8.0000610

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 松かさの開閉機構の解明を目指したマトリックス成分の特性解析2023

    • Author(s)
      平野聖也、暮井達己、堀川祥生
    • Organizer
      第73回日本木材学会大会(福岡大会)
  • [Presentation] 脱多糖・脱リグニン木材からみた圧縮負荷に対する木質高分子の応答性2023

    • Author(s)
      暮井達己、半 智史、船田 良、堀川祥生
    • Organizer
      第73回日本木材学会大会(福岡大会)
  • [Presentation] 木材の圧縮特性とそれに寄与する組織・細胞構造ならびに化学成分評価2023

    • Author(s)
      酒井俊輔、暮井達己、平野聖也、半 智史、船田 良、堀川祥生
    • Organizer
      第73回日本木材学会大会(福岡大会)
  • [Presentation] アルコリシスがスギ材の早材・晩材部のマトリックス成分に及ぼす影響2023

    • Author(s)
      WEI XIAOYI、暮井達己、平野聖也、小薗拓馬、堀川祥生
    • Organizer
      第73回日本木材学会大会(福岡大会)
  • [Presentation] 脱リグニン処理を施した高密度木材の階層構造評価 および圧縮挙動の観察2023

    • Author(s)
      岡野こころ、暮井達己、平野聖也、安藤恵介、堀川祥生
    • Organizer
      第73回日本木材学会大会(福岡大会)
  • [Presentation] 松かさの開閉挙動に及ぼすマトリックス成分の機能解析2022

    • Author(s)
      平野聖也、暮井達己、中西千聡、堀川祥生
    • Organizer
      セルロース学会第29回年次大会
  • [Presentation] 酸処理による脱多糖や脱リグニンを施したスギ材の解剖学的特徴と力学特性に関する研究2022

    • Author(s)
      暮井達己、酒井俊輔、堀川祥生
    • Organizer
      セルロース学会第29回年次大会
  • [Presentation] 針葉樹材の圧縮特性とそれに寄与する組織・細胞構造および化学成分評価2022

    • Author(s)
      酒井俊輔、暮井達己、平野聖也、半 智史、船田 良、堀川祥生
    • Organizer
      セルロース学会第29回年次大会
  • [Presentation] 松かさの開閉機構の解明を目指したマトリックス成分の特性解析2022

    • Author(s)
      平野聖也、暮井達己、堀川祥生
    • Organizer
      第73回日本木材学会大会(福岡大会)
  • [Presentation] 脱多糖・脱リグニン木材からみた圧縮負荷に対する木質高分子の応答性2022

    • Author(s)
      暮井達己、半 智史、船田 良、堀川祥生
    • Organizer
      第73回日本木材学会大会(福岡大会)
  • [Presentation] 木材の圧縮特性とそれに寄与する組織・細胞構造ならびに化学成分評価2022

    • Author(s)
      酒井俊輔、暮井達己、平野聖也、半 智史、船田 良、堀川祥生
    • Organizer
      第73回日本木材学会大会(福岡大会)
  • [Presentation] アルコリシスがスギ材の早材・晩材部のマトリックス成分に及ぼす影響2022

    • Author(s)
      WEI XIAOYI、暮井達己、平野聖也、小薗拓馬、堀川祥生
    • Organizer
      第73回日本木材学会大会(福岡大会)
  • [Presentation] 脱リグニン処理を施した高密度木材の階層構造評価 および圧縮挙動の観察2022

    • Author(s)
      岡野こころ、暮井達己、平野聖也、安藤恵介、堀川祥生
    • Organizer
      第73回日本木材学会大会(福岡大会)

URL: 

Published: 2023-12-25  

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