2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of Intramolecular Polarization Determination Method Using Electron Scattering and Quantum Chemical Calculations
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22K19296
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
安永 卓生 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (60251394)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | 電子顕微鏡 / 電子線回折 / 静電ポテンシャル / 量子化学計算 / 電子状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
結晶構造解析の手法として、X線結晶構造解析が広く用いられてきた。電子線結晶構造解析は,これまで試料損傷、傾斜角の制限、ドリフトなどの問題からあまり用いられて来なかった。近年、micrcoEDという低電子線量で行う、試料損傷を押さえて、小さい結晶から構造解析する手法が注目されている。microEDなどの電子線回折を用いた結晶構造解析では、一般的に、構造精密化を行う際にX線結晶構造解析に用いるプログラムを流用している場合が多い。しかし、X線回折では光子が試料の電子雲と相互作用することから、解析の結果として電子密度が得られるのに対して、電子線回折では、照射電子は試料の原子核や電子の分布由来のクーロン力と相互作用し、回折からは静電ポテンシャルが得られることになる。このとき、静電ポテンシャルは試料の電子状態をより反映してくるため、X線では考慮されない電子状態を考慮した構造精密化が可能である。本研究では、アセトアミノフェンをテスト試料として、microED・電子線回折法において、量子化学計算を用いて電子状態を考慮した構造精密化手法を提案し、電子状態の解明を目的とした。 ここまでの研究成果として、電子密度及び静電ポテンシャルから,R因子をもとに比較することで、電子回折を利用した構造解析では、電子状態をより反映する静電ポテンシャルで行われるべきであることを示唆した。さらに、X線用アルゴリズムで精密化したモデルを初期モデルとして、水素分子の位置や強度補正などのモデル更新を行い、R因子から、構造信頼性が向上が示された。また、精密化構造から対象分子が持つ電子状態が示すことに成功している。 本研究は、電子回折を用いた構造解析の精密化において、量子化学の情報を加え、信頼性の高い構造を計算する手法であり、物質の構造及び反応性をより詳細に提供し、生化学研究や創薬分野に対して貢献できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
量子化学計算を用いた構造精密化が可能であることをR因子を用いて示すことができた今後、温度因子の影響及び電子配置の変更による精密化のステップに入る所である。国内学会及び国際会議で進捗状況を発表している。以上の点から,1年目としては順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本来逆空間で定義される温度因子を、実空間で計算されることを目指す。現在、分子全体の平行移動に関わる温度因子のみを考慮しているが,原子ごとの温度因子を設定する、温度因子の畳み込み計算を行い、R因子を用いてその評価を行う。 さらに、電子配置を変更した上で、静電ポテンシャルを計算するルーチンが未だ開発されていないので,量子化学計算Gaussianと連携した形で計算できるようなツールを作製する。 これらを通して、R因子を元に、小分子の電子配置まで精密化するための流れをつくる。
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