2022 Fiscal Year Research-status Report
単細胞真核生物を題材とした真核生物-原核生物間水平伝播遺伝子の進化過程解明
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22K19342
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
本郷 裕一 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (90392117)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 遺伝子水平伝播 / 原生生物 / 細胞内共生 / シロアリ / ゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、単細胞真核生物(原生生物)と原核生物(細菌・アーキア)間で水平伝播した遺伝子の進化過程解明を目的としている。具体的には、シロアリ腸内原生生物の核ゲノム配列と、同原生生物に特異的に細胞内共生する原核生物のゲノム配列を取得し、互いに水平伝播した遺伝子/ゲノム領域を特定し、水平伝播後の進化過程を推定するものである。シロアリ腸内原生生物には宿主種に特異的かつ多様な系統群の細菌が細胞内共生しており、こうした研究課題の材料としては最適と考えている。 2022年度は、まず解析候補となる原生生物細胞内共生細菌の、より多様な種類のゲノム配列を網羅的に再構築した。複数の原生生物種の1細胞から取得済みであった共生細菌叢メタゲノム(細菌群集全体のゲノム)配列断片を、情報解析学的に細菌種ごとに仕分け(ビニング)、多様かつ多数のこれまで未取得であった原生生物細胞内共生細菌のドラフトゲノム配列を再構築することができた。また以前より解析していた、宿主の原生生物由来遺伝子群を保有する新規細胞内共生細菌系統群の完全長ゲノム配列を複数取得し、詳細な分子系統解析や比較ゲノム解析を行った上で、論文投稿中である。今後は、さらに多くの細胞内共生細菌のゲノムの完全長配列取得を目指し、それらの真核生物ゲノム由来遺伝子・ゲノム領域を特定し精査するとともに、宿主原生生物ドラフトゲノム配列の解析も進めていく。予備的な解析では、より多様な細胞内共生細菌ゲノム上に真核生物由来の遺伝子領域がありそうだが、そうした領域はビニング過程で除去される可能性が高く、より完成度の高い細菌ゲノム配列の構築が重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、まず、より網羅的に原生生物細胞共生細菌ゲノムを取得するため、各原生生物種の1細胞から取得した共生細菌叢メタゲノム配列のビニングを試みた。その結果、予想以上に多様な種類の共生細菌ドラフトゲノム配列を構築することができており、解析材料の多様性も向上した。初年度としては概ね順調な進展といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初、真核生物からの多くの水平伝播遺伝子が発見された原生生物細胞内共生細菌系統群と他2-3の細菌系統群のみを解析対象として考えていたが、上記のように、予想以上に多様な共生細菌ゲノムを再構築できそうなので、それらも含めて解析していく。宿主原生生物ゲノム解析もさらに進めていく。全体としては概ね計画に変更はない。
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Causes of Carryover |
当初、新規なゲノム配列取得を複数回実施する予定であったが、その前にこれまでに取得済みであった多くの原生生物細胞共生細菌叢メタゲノムサンプルを試みに再解析した結果、予想外に多種多様な細胞内共生細菌のドラフトゲノム配列再構築に成功した。それらの解析に専念していたため、次世代シーケンサーを用いた新規解析が不要となった。その分は2023年度の真核生物ゲノム配列の拡充と、共生細菌ドラフトゲノムのナノポアMinIONロングリードを追加しての完全長ゲノム配列取得費用に充てたい。また、コロナ禍がかなり収束したことから、2022年度中は抑制していた実験材料のサンプリングと対面実施の学会への出張旅費に充てたい。
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