2022 Fiscal Year Research-status Report
ALSモデルカニクイザルを用いた超早期病態解明および治療戦略構築
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22K19359
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
等 誠司 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (70300895)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
漆谷 真 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (60332326)
小林 憲太 生理学研究所, 行動・代謝分子解析センター, 准教授 (70315662)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | カニクイザル / 筋萎縮性側索硬化症 / トランスジェニックサル / ノックアウトサル / FUS遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis: ALS)は運動ニューロンが選択的に変性・脱落する進行性の神経難病で、根本的治療法が存在しないため、患者の多くは数年で死に至る。我が国では約9000人のALS患者が存在すると言われ、その約1割は家族性と考えられている。家族性ALS責任遺伝子の1つであるFused in sarcoma(FUS)遺伝子に変異をもつALS患者は、若齢発症が特徴で進行が速いケースが多い。本研究は、ヒトと同じ運動神経系の構造をもつ旧世界ザルの1種であるカニクイザルを用いてALSモデルサルを作製し、ヒトでは解析不可能な発症超早期や未発症時期の運動ニューロンの病態を明らかにし、ALS発症超初期の病態に基づく新規診断・治療法の開発を目指す。 これまでに、若年発症急速進行性のALSを引き起こすヒトFUS-P525L変異遺伝子をカニクイザル受精卵に導入したトランスジェニックカニクイザルの作出に成功しているので、令和4年度はエクソン14を欠失するFUS-G466VfsX14と同様の効果を生む遺伝子改変サルの作出を行った。カニクイザルFUS遺伝子のエクソン14の両側(イントロン13および14内)にCRISPR/Cas9の標的配列を複数設定した。カニクイザルES細胞に、標的配列に対するガイドRNAおよびCas9を発現するプラスミドをレポータープラスミドとともに遺伝子導入し、最も切断効率が良かった標的配列のペアを選別した。次いで、選択したガイドRNAとCas9タンパク質を人工合成してカニクイザル受精卵に導入し、胚盤胞期まで培養した後に、仮親の子宮に移植した。現在のところ、2頭の産児を得て表現型の有無を観察中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通り、ヒトFUS-P525L変異遺伝子を導入したトランスジェニックカニクイザルとともに、FUS遺伝子エクソン14欠失ノックアウトサルの作出に成功したので、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトFUS-P525L変異遺伝子を導入したトランスジェニックカニクイザルでは、さまざまな処置が可能となる満2歳以降に変異遺伝子発現を誘導するドキシサイクリンの投与を開始し、MRIなどの検査を経時的に行いながら表現型を観察する。令和4年度に作製したFUS遺伝子エクソン14欠失ノックアウトサルについても、同様に表現型の観察を継続する。
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Causes of Carryover |
ヒトFUS-P525L変異遺伝子導入トランスジェニックカニクイザルについても1頭の作製を試みたが、妊娠に至らなかったため、その後の解析費用が未使用となった。平成5年度にも再度作製を試みる予定である。
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