2022 Fiscal Year Research-status Report
失われていくシナプスにおけるシナプス伝達能喪失過程の解明
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22K19367
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
緑川 光春 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (60632643)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | シナプス / 開口放出 / 電気生理 / 神経回路発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
成熟した神経回路の形成は脳機能の発現のために不可欠である。神経回路の形成期には神経細胞はその投射先に軸索を伸長し、標的となる神経細胞に対してシナプスを形成するが、発達初期にはシナプス形成が過剰に行われ、この時期に形成されたシナプスのおよそ40‐50%が発達に伴って失われて成熟した神経回路が形成されることが知られている。したがって、生き残るシナプスの発達(シナプス強化)と失われていくシナプスの消失(シナプス除去)は成熟した神経回路形成のためには等しく重要な機構である。生き残っていくシナプスがどのような機能分子を持っており、そこでのシナプス伝達がどのように発達していくのかという観点からの研究は盛んに行われており、その概要が明らかになりつつある。しかし失われていくシナプスに関しては、それらが何故失われてしまうのか、失われるまでにどのようにシナプス伝達が変化して最終的にシナプス構造自体が失われるのか、といった根源的な疑問は驚くべきことに未解決なままであり、未だに芽生え期の段階にある。 本研究は失われるシナプスのシナプス前部を「実際に失われる前から」選択的に標識することに成功した(Midorikawa & Miyata, PNAS, 2021)実験系に立脚しており、失われるシナプスでのシナプス伝達能がどのような原因・順序で失われていくのかを明らかにすることを目的とするものである。 本年度は発達途上において将来失われるシナプス前終末に直接パッチクランプ法を適用することによってその電気生理学的、形態学的側面を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
発達途上の神経回路において将来失われるシナプス前終末からの直接記録、および直接トレーサー注入により機能的、形態学的な解析を進めることができた一方で、シナプス前部、後部のシナプス伝達能がどのような順序で失われていくのかを追求する実験については、申請者の所属機関の変更の影響もあり未だに行えていない。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的である、失われるシナプスにおいてシナプス伝達能がどのような原因・順序で失われていくのかについて、当初計画していた電気生理学的実験によって解明を推進していく必要がある。一方で、形態学的解析、および分子配列に関するイメージングについては当初の計画以上の進展が期待できる状態になっていることから、こちらの観点からのアプローチも視野に入れつつ研究を推進していきたい。
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Causes of Carryover |
申請者の所属研究機関の変更に伴い、物品、消耗品等を新たな研究機関にて購入する必要性が生じたために次年度使用額として用いることとした。
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