2022 Fiscal Year Research-status Report
膜1回貫通型受容体を対象にした「構造生物学での最後のフロンティア」解消への挑戦
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22K19375
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小川 治夫 京都大学, 薬学研究科, 准教授 (40292726)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 膜タンパク質 / 立体構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
X線結晶解析やクライオ電子顕微鏡法(クライオEM)の発展により、G-protein Coupled Receptor (GPCR)等多くの受容体や、イオンチャネル・イオンポンプタンパク質等の膜輸送体の立体構造が報告されている。だがこれまで報告されている膜タンパク質の立体構造は、生体膜を複数回貫通する膜貫通部位を持つ、多回膜貫通型の膜タンパク質である。その一方で、膜を1回のみ貫通する、いわゆる1回貫通型の膜タンパク質の「全長構造」の報告は皆無である。その中で特に重要なものは生体にとって重要なホルモンやサイトカイン等の受容を担う1回貫通型受容体である。だが、1回貫通型受容体は膜貫通領域を1本しか持たないことなどもあり、大量発現・精製や、その後の立体構造解析へ向けたハンドリングが極めて困難であることが知られている。以上のことを考え合わせると、膜1回貫通型受容体の立体構造解析は構造生物学における最後のフロンティアと言っても過言ではないかもしれない。そこで、本研究では申請者のこれまでの研究を発展させ、研究代表者の独自の大量発現・精製技術を駆使することで、この「構造生物学における最後のフロンティア」である膜1回貫通型受容体の生理的状態での構造をクライオ電子顕微鏡により決定することを目指す。これにより、膜1回貫通型受容体での膜を隔てた信号伝達機構・基質認識機構の解明を行うことが可能になると考えられる。令和4年度は大量精製した精製標品のナノディスクへの再構成を試み、これに概ね成功したと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
膜1回貫通型受容体を培養細胞に定常的に発現させ、界面活性剤で可溶化後、タグを用いて精製を行っている。得られた精製標品については生理活性の測定を行い、十分な活性を有していることが確認された。そこで本年度はまずナノディスクへの再構成を試みた。再構成後の精製標品は活性を有していたので、ナノディスクへの再構成については概ね成功したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究により、ナノディスクへの再構成は概ね成功した。だが、その再構成の効率はまだ十分とは言えない状況である。そこで本年度は再構成の際の脂質成分を変える等の工夫や、その他再構成の手法の検討を行うことで、ナノディスクへの再構成効率を上昇させる。もし、十分量が再構成されたなら、構造解析への転用を考える。
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