2022 Fiscal Year Research-status Report
自己学習型ウイルス抵抗性細胞の樹立に向けた技術基盤の開発
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22K19436
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
本田 知之 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (80402676)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | レトロエレメント / ウイルス / 免疫 / 抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、iPS細胞や幹細胞を用いた細胞治療が次々と開発されている。細胞治療では、治療に有効な細胞(ドナー細胞)を作りそれを患者(レシピエント)体内に導入することで、治療効果を発揮する。その際に、貴重なドナー細胞がレシピエントに拒絶されないよう、免疫抑制剤を併用する。免疫抑制剤存在下では、十分な免疫応答が期待できないため、感染症リスクが存在する。貴重なドナー細胞へのウイルス感染や感染による損害を防ぐためには、ワクチンによる免疫賦活化が有効であるが、免疫抑制剤併用下では十分な効果は期待できない。もし、免疫抑制剤の影響を受けないウイルス抵抗性の付与方法を開発することができれば、細胞治療の有用性を高めることにつながると考えられる。本研究では、ゲノムに取り込んだウイルス配列が持つ抗ウイルス活性に着目し、ウイルス配列のゲノムへの取り込み現象を安全にかつ高確率に発生させる「自己学習型ウイルス抵抗性細胞」の作出の技術基盤を検討した。 本年度の研究においては、この現象を触媒するレトロエレメントLINE-1の活性調整に関して、以下に示す結果を得た。 (1)一卵性双生児検体を用いて、LINE-1の発現が他の遺伝子の発言に比べて、環境要因の影響を受けやすいことを明らかにした。CAGEを用いて、その発現を制御するモチーフ検索を行なったが、各双生児ペアで共通するモチーフの発見には至らなかった。 (2)LINE-1の活性を制御する宿主因子を、shRNAライブラリーを作成しスクリーニングした。その結果、LINE-1活性を増強すると考えられる宿主因子の同定に至った。 このように本年度は、「自己学習型ウイルス抵抗性細胞」の作出について、予定通りの成果を挙げることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題全体の研究計画では、2つの小課題を提案していた。 LINE-1の活性制御によるウイルス抵抗性細胞の樹立とウイルス配列取り込みにより生じる抵抗性配列の特性解析である。その結果、レトロエレメントLINE-1の発現制御が環境要因への介入により可能であることを見出し、さらにLINE-1活性を制御する宿主因子の候補も見出した。 全体として、当初の計画より若干の変更点はあるが、前者については大きな成果があり、後者についてもいくつかの鍵となる予備知見を得ることができている。以上により、本研究の目的は概ね予定通りのレベルで達成されたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度見出した活性調節に関わる基盤情報をもとに、LINE-1活性を増強する細胞の作出を試みる。また、LINE-1によるウイルス配列の取り込みを任意の遺伝子座に行えるように、挿入部位を指定する技術の開発をおこなう。一方で、取り込んだウイルス配列から産生される抗ウイルス活性RNAの特性候補について、その特性を持つ人工RNAを作成し、抗ウイルス活性の有無を検証する。これらを通じて、最終的に「自己学習型ウイルス抵抗性細胞」の作出につなげる予定である。
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Causes of Carryover |
本年度の解析で行う予定であったRNA-seq解析について、公開されているRNA-seqデータを用いて行なっていた予備検討に時間を要したため、次年度以降に使用予定が変更となった。また、それに伴い合成する予定であった人工RNAの合成も次年度に行うことになったため、当該予算を次年度使用額として計上した。
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Remarks |
アウトリーチ活動 岡山大学令和4年度高校生のための大学講座「新型コロナウイルスはどこへ向かうのか?」(令和4年8月10日)
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