2022 Fiscal Year Research-status Report
ナノDDSで挑む腫瘍血管内皮細胞を標的とした新機軸のがん治療法の開発
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22K19448
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中村 孝司 北海道大学, 薬学研究院, 助教 (20604458)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 薬物送達学 / ナノ粒子 / がん治療 / 腫瘍血管内皮 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は腫瘍血管内皮細胞(tumor endothelial cell: TEC)における標的遺伝子の発現制御を可能とするsiRNA搭載脂質ナノ粒子とがん免疫を効果的に誘導可能なアジュバント搭載脂質ナノ粒子を併用することで劇的かつ急速ながん治療効果が得られることを見出した。興味深いことに、このがん治療効果はTECの破壊に起因するものである可能性が示唆されたが、既知のメカニズムでは全く説明することができなかった。そこで本研究では、この併用療法のがん治療メカニズムを解明し、従来のがん薬物療法の課題を解決するTECを標的とした新機軸のナノがん治療法を確立することを目的としている。2022年度は、併用療法後のTECの量と血管構造の変化を遺伝子発現および免疫染色による組織学的観点から調べることで、mRNAレベルとタンパク質レベルでTEC破壊の時間スケールを明らかにすることができた。また、明らかになったTEC破壊の時間スケールに従い、TECの単離とRNA抽出を行い、RNAシーケンシング解析を実施した。現在はデータの解析を進めている。さらに、併用療法によるTEC破壊への免疫細胞の関与を明らかにするため、T細胞を欠損しているヌードマウスにマウスがん細胞を皮下移植したモデルを用いて抗腫瘍活性を調べた。その結果、wild typeマウスにて認められた抗腫瘍活性と同等の活性が維持されており、抗腫瘍活性にT細胞は関与していないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、TECの時空間的変化の解析、RNAシーケンシング解析、併用療法における免疫システムの関与に関するデータを取得することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
RNAシーケンシングから得られたデータの解析を進め、TEC破壊に関連する分子や経路を同定する。また、併用療法における免疫システムの関与として、自然免疫応答に焦点を当てた解析を実施する。さらに、TECを標的とした新機軸ナノがん治療法として確立するために、併用療法に用いる核酸と脂質ナノ粒子処方の最適化を進めるとともに、ヒトがん細胞株を用いた治療実験を行うことで、本併用療法の有用性を検証する。
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