2022 Fiscal Year Research-status Report
難治性疾患を対象とした臓器指向性をもつ次世代核酸医薬の開発
Project/Area Number |
22K19497
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
石橋 大輔 福岡大学, 薬学部, 教授 (10432973)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫨川 舞 福岡大学, 薬学部, 准教授 (10509186)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 難治性疾患 / 核酸医薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究は、核酸送達のための製剤設計を基盤として、難治性疾患を対象に、疾患に合わせた臓器指向性機能を有する核酸医薬による治療効果を検証し、転移性がん疾患、正常型から構造が異常化したタンパクが凝集することによって引き起こされるミスフォールディング病とよばれる中枢性の神経変性疾患(プリオン病、タウオパチー)の核酸医薬を用いた次世代新薬開発を目的としている。本年度は当初の研究計画に準じて、ペプチドを利用した高効率siRNAデリバリーナノ粒子の創製に関する検討を行った。特に本年度はトリプルネガティブ乳がんに着目し、トリプルネガティブ乳がん特異的に発現が認められる膜タンパクへ高い結合能を有する機能性ペプチドを創出し、ナノ粒子表面に配置したがん標的ナノ粒子の調製を行い、その製剤評価を行った。結果として、がん細胞特異的な集積性が認められ、がん細胞内に送達されたsiRNAによって標的遺伝子の抑制効果も確認できた。ゼブラフィッシュを用いたがんモデルにおいて、静脈内投与後の血液循環におけるがん細胞への集積性も確認することができたことより、がん標的ナノ粒子設計としては良好な結果を得ている。現在は、がん細胞標的ナノ粒子の表面電荷やサイズの詳細な条件についてsiRNAの安定性を基準に評価を遂行している。プリオン病、タウオパチーに関しての標的遺伝子の決定とBBB透過性を考慮した脳標的ナノ粒子設計は今後の課題であり、来年度以降の検討課題としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はトリプルネガティブ乳がんに焦点を当て、がん標的ナノ粒子の調製について検討を行い、その有効性、in vivo試験でのがん細胞集積性について良好な成果を得た。しかしながら、プリオン病、タウオパチーに関しては、がん細胞標的化と比較し、発症機序の不明瞭さを考慮すると標的遺伝子の決定には複数の標的因子が存在し、そこからの標的決定には複数の事前評価が必要である点、脳内移行についてはBBB透過のための製剤設計が必要である点で時間を要しており、今年度は他の業務のとの兼ね合いでそれらを検討する時間が十分に確保できず、予定していた今年度のすべての検討を終了するに至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(2023年度)はプリオン病、タウオパチーにおける標的遺伝子の決定と本年度の成果として得られたペプチドで標的細胞へ集積性を高める「ナノ粒子の基本構造」に基づき機能性ペプチドを活用したBBB透過性/脳指向性を兼ね備えた新規ナノ粒子設計を構築する。プリオン病では病原体プリオンの感染成立を担う標的因子、タウオパチーではタウタンパクの構造異常化を制御する標的因子に対する核酸医薬を開発する。製剤設計には、分子動力学シミュレーションによるインシリコ構造予測解析などを駆使し、効率化を図る。各標的因子に対する核酸医薬(siRNA)を設計後、培養細胞にて標的因子の発現抑制レベルを評価し、核酸医薬の最適化を行う。具体的な製剤評価の内容としては、研究計画に準じ、機能性ペプチド結合型核酸医薬の薬効と安全性評価およびin vivo試験における体内臓器への分布を確認する。最終年度(2024年度)には、疾患モデルマウス(がん転移モデルマウス、プリオン病、タウオパチーモデルマウス)に対する治療効果を評価する。がん転移モデルでは、乳がん転移モデルマウスに投与し、各臓器への転移の程度について病理学的・生化学的解析を行い、治療効果を評価する。プリオン病、タウオパチーモデルマウスを用いた評価では、病原体プリオンを感染させたプリオン病モデルマウス、タウタンパク遺伝子を改変したタウオパチーモデルマウスを使用し、発症前に標的因子に対する核酸医薬製剤を投与する。生存期間、臓器の病理学的・生化学的解析により、治療効果を評価する。
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