2022 Fiscal Year Research-status Report
機能獲得型変異p53が制御する癌幹細胞化の解明と治療戦略の確立
Project/Area Number |
22K19577
|
Research Institution | Kyushu Central Hospital of the Mutual Aid Association of Public School Teachers |
Principal Investigator |
前原 喜彦 公立学校共済組合九州中央病院(臨床研究センター), 臨床研究センター, 主任研究員 (80165662)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北尾 洋之 九州大学, 薬学研究院, 教授 (30368617)
飯森 真人 九州大学, 薬学研究院, 准教授 (20546460)
沖 英次 九州大学, 医学研究院, 准教授 (70380392)
|
Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
|
Keywords | 癌幹細胞化 / p53機能獲得型変異 / 遺伝子発現プロファイル / エピゲノム異常 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌の克服を難しくさせる再発と転移の原因の一つに,抗癌剤治療に抵抗性を示す癌幹細胞が考えられる。癌の癌幹細胞化のメカニズムのひとつにエピゲノム異常が関与すると考えられ,癌抑制遺伝子p53機能獲得型変異体がエピゲノム異常を起こすことで癌の増殖を亢進させることが報告された。さらに最近の研究においていくつかのミスセンス変異体はp53ミスセンス変異体がクロマチン制御因子の発現上昇を誘導し,その結果ゲノムワイドにクロマチン制御を変化させることでエピゲノム異常を起こすことで癌の増殖を亢進させることが示され,あたかも‘癌遺伝子’のようにふるまうことが報告された。本研究はp53変異体が癌幹細胞化にどのような影響を与えるかを基礎研究で明らかにし,さらに臨床検体による大型コホートを用いてp53変異と癌幹細胞の関連性を明らかにすることで,p53変異ステータスが癌幹細胞の特性決定に起因するという従来とは全く異なる視点からの新規癌幹細胞形成モデルの提唱に挑戦する。 初年度はp53機能獲得型変異体における遺伝子発現プロファイルの変化と癌幹細胞化の検証する研究項目を実施した。そのなかで,本研究遂行に必要とされるアイソジェニックなp53変異細胞株パネルを構築するために,野生型p53遺伝子をもつHCT116細胞をベースとし,ゲノム編集技術によりp53ノックアウト細胞,および異なる2種類のp53機能獲得型ミスセンス変異のノックイン細胞を樹立した。樹立したp53変異細胞では,機能獲得型ミスセンス変異p53が特異的に結合することが知られている転写因子ETS2との結合が確認された。また細胞内の遺伝子発現プロファイルの比較でも,p53の野生型,欠損株,機能獲得型ミスセンス変異株の間には明確な違いが観察された。したがって本研究のモデル細胞として今回樹立したp53変異細胞株パネルの有用性が示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究申請時には令和4年度-5年度の研究予定期間のうち、2つの課題(課題1 p53機能獲得型変異体における遺伝子発現プロファイルの変化と癌幹細胞化の検証,課題2 臨床検体による大型コホートを用いたp53変異と癌幹細胞性の相関性)に取り組むことを計画した。 令和4年度は主に課題1に取り組んだ。一般的にp53ミスセンス変異の解析に関する報告の多くが異なるがん種から樹立された多様な細胞株間での比較によって行われている。しかしながら,これらの解析方法では細胞株間の異なる遺伝的バックグラウンドの影響や,p53ミスセンス変異タンパク質の長期発現に適応した細胞株の二次的な遺伝子発現プロファイルの変化による影響を除外できない。そこで野生型p53遺伝子をもつHCT116細胞をベースとし,ゲノム編集技術によりp53ノックアウト,および異なる2種類のp53機能獲得型ミスセンス変異(R175H; 立体構造変異,R248Q; DNA結合性変異)のノックイン細胞を樹立した。親株に対して,樹立したp53欠損株および機能獲得型ミスセンス変異株の特性を検証したところ,下流因子であるのp21やMDM2の遺伝子発現の低下や種々の抗がん剤に対するp21蓄積の不全が認められ,またすでに論文報告されている変異p53と転写因子ETS2との結合が,今回樹立された機能獲得型ミスセンス変異株でも再現された。またRNA次世代シークエンス(RNA-seq)解析よる網羅的な遺伝子発現プロファイルを比較やprincipal component analysis (PCA)においてもp53の野生型,欠損株,機能獲得型ミスセンス変異株の間には明確な違いが観察された。したがって今回樹立したp53変異細胞株パネルは本研究のモデル細胞としてp53機能獲得型変異体による癌幹細胞化促進への関与の有無を検証するために有用であることが示唆された。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和5年度には、前年度に樹立したp53変異細胞株パネルを用いて,幹細胞マーカーCD34,Sca1,ABCG2,CD150などの発現変動をリアルタイムPCR解析で定量解析して,p53機能獲得型変異体による癌幹細胞化促進への関与について詳細な解析を行う。また癌幹細胞を誘導することが示唆されているTGF-βにより誘導される上皮間葉転換(epithelial-mesenchymal transition;以後EMTと記載)や,抗がん剤より誘導される細胞老化をp53変異細胞株パネルにより実験的に誘導することで,それらの変化とp53ステータスとの間の関連性を検討する。 また課題2である臨床検体によるp53変異と癌幹細胞性の相関性の解析を進捗させる。大腸がん臨床検体を用いて,含むp53ミスセンス変異のホットスポットであるDNA結合ドメインのゲノムシーケンス解析を行い,p53機能獲得型変異をもつ臨床検体において幹細胞マーカーが共存しているのかを観察する。
|
Research Products
(9 results)
-
-
[Journal Article] Trifluridine/tipiracil+bevacizumab (BEV) vs. fluoropyrimidine-irinotecan+BEV as second-line therapy for metastatic colorectal cancer: a randomised noninferiority trial2023
Author(s)
Kuboki Y, Terazawa T, Masuishi T, Nakamura M, Watanabe J, Ojima H, Makiyama A, Kotaka M, Hara H, Kagawa Y, Sugimoto N, Kawakami H, Takashima A, Kajiwara T, Oki E, Sunakawa Y, Ishihara S, Taniguchi H, Nakajima TE, Morita S, Shirao K, Takenaka N, Ozawa D, Yoshino T.
-
Journal Title
British Journal of Cancer
Volume: 128
Pages: 1897~1905
DOI
-
-
[Journal Article] Lack of impact of the <scp>ALDH2</scp> rs671 variant on breast cancer development in Japanese <scp>BRCA1</scp> /2‐mutation carriers2022
Author(s)
Mori T, Okamoto Y, Mu A, Ide Y, Yoshimura A, Senda N, Inagaki-Kawata Y, Kawashima M, Kitao H, Tokunaga E, Miyoshi Y, Ohsumi S, Tsugawa K, Ohta T, Katagiri T, Ohtsuru S, Koike K, Ogawa S, Toi M, Iwata H, Nakamura S, Matsuo K, Takata M.
-
Journal Title
Cancer Medicine
Volume: 12
Pages: 6594~6602
DOI
-
-
-
-
-