2023 Fiscal Year Research-status Report
New strategic approach for ameliorate hypoxic injury using the PHD1 specific inhibitor and definition of the molecular mechanism.
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22K19755
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
辻田 忠志 佐賀大学, 農学部, 准教授 (20622046)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川口 真一 佐賀大学, 農学部, 准教授 (00722894)
伴 匡人 久留米大学, 分子生命科学研究所, 准教授 (00579667)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 低酸素 / 低分子化合物 / PHD/HIF |
Outline of Annual Research Achievements |
体内では微小環境における小規模塞栓が常に形成されては解消され、恒常性が維持されている。塞栓形成は低酸素障害を引き起こし、継続すると慢性炎症となるため、初期の低酸素障害に対する予防や介入法の確立が求められている。低酸素状態の感知応答には、Prolyl hydroxylase domain-containing protein(PHD)群による転写因子Hypoxia inducible factor-α(HIF-α)の水酸化制御が重要な役割を果たす。常酸素下では、HIF-αはPHD群により水酸化後、ユビキチン化され、プロテアソームで分解される。酸素濃度が低下すると、PHD群によるHIF-αの水酸化度合いが低下し、HIF-αが安定化する。HIF-αの安定化は、低酸素ストレスに対する防御機構を強力に発動させることができる。酸素に暴露せずにHIFを安定化できれば、低酸素障害から組織を保護し、機能回復が加速できる。 本研究ではPHD1、2および3の局在が、低酸素や化合物刺激で局在が変化するのかについて解析を進めている。現時点でPHD1およびPHD2のC末端にGFP及びRFPを付加した融合タンパク質を発現するベクターを構築し、実際にPHD1は核に、PHD2は細胞質に局在した。低酸素暴露を行うと、PHD1とPHD2が混在するようになるが、時間経過とともに、元に戻る様子が観察された。 本年度は、我々が所持する新規PyrzA化合物のIn vivoにおける活性検証を主体として実施した。PyrzAは40mg/kg 体重で投与しても、マウスには毒性を示さないが、HIFの誘導活性は非常に弱いため、組織移行が十分ではない可能性が示唆された。現在、合成した化合物の中で組織移行性が良好なものを選抜して、各種生化学的パラメーターの取得を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究分担者とともにPyrzA誘導体の合成手法を改良し、新たに低分子型のPyrzA誘導体を作出した。それぞれのHIF誘導活性が、当初化合物のPyrzAよりも強いものであることも明らかとした。さらに、数種のin silicoモデリング系を試して、PHD1/2への結合度が異なる化合物の探索を進めて、理論上PHD1にPHD2より強く結合するような化合物を選抜した。それぞれの化合物についてHIF1a及びHIF2aの誘導度合いについてイムノブロットで確認を進めたが、明確な差異は検出できなかった。現在、化合物の濃度や誘導時間を変更して、差異が見られるのか検証を進めている。 また、これまでカイコ個体を活用して、高純度の組換えPHD1およびPHD2タンパク質の調整に取り組み、十分な量のPHD1及びPHD2組換えタンパク質を得た。同時に、Sf21細胞を活用して、PHD2のHisタグ連結部を延長させたタンパク質の発現にも取り組んだ。その結果、PHD1とPHD2両方とも十分なタンパク質を得ることができた。現在、PyrzAやその誘導体とともに共結晶が形成できるのか、検討を行っている。加えて、クライオ電子顕微鏡解析についても相談を開始している。また、これらの組換えPHD1を用いて、HPLCでHIF-1αペプチドの水酸化を定量化し、in vitroでのPyrzA誘導体の活性評価方法も確立することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
PHD1のディスロケーター遺伝子のスクリーニングにおいては、PHD1-dsRED、PHD2-GFPの安定発現細胞株が樹立できたので、核内輸送阻害剤レプトマイシンや各種刺激を試したのちに、CRISPRスクリーニングが実施できるのか、蛍光顕微鏡と画像解析システムを活用して検証を進める。低分子型のPyrzA誘導体それぞれへ核移行シグナル化合物を付加する実験を進めており、効率よく核へ導入できるか化合物を選抜する予定としている。 すでに作出した、組換えPHDタンパク質を活用して、PyrzA誘導体との結合面について詳細な解析を進るために、共結晶を作出するなどしてHIFタンパク質結合がどのように阻害されているか明確にする予定としている。加えて、Pyrz Aの誘導体をマウスへ静脈注射をするなどしてin vivoでの効果検証を進めており、実際にどの化合物がHIFを効果的に誘導できるのか選抜し、今後、PHD1と2の選択制をだす化合物の開発に活用する予定としている。
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Causes of Carryover |
創薬スクリーニングを実施するために、以前に購入していた試薬を活用したことと、設備に関しては共通機器を活用するなどして節減を図った。 余剰して繰り越す資金は来年度、スクリーニング等に使用する、ライブラリーの購入費用に充てる予定としている。
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